不安障害で職場に馴染めず悩んでいる男性社員
公開日:2020年11月18日/更新日:2021年11月29日
監修:遠藤まなみ(代表カウンセラー)

「学校や職場に行けない」「電車や飛行機に乗れない」「人前で話ができない」「自然災害が怖い」「不安と恐怖で眠れない」!?なぜ人は不安障害を発症してしまうのか!?


人が毎日を生きていく中で、心配になったり不安になったりすることは誰にでもあることです。

 

入学試験や就職、転職など人生において新しい環境に入っていく時は誰だって不安になります。

 

不安を感じれば、心も体も硬直し緊張するので、できることなら不安を感じない生活をしたいと思うのが多くの人の正直な気持ちだと思われます。

 

しかし不安を感じない生活というのはとても危険で、取り返しのつかない大失敗をしてしまう可能性があります。

 

不安というものは人にとってありがたい「心のアラーム(警報機)」の役割を果たしてくれています。

 

たとえば高い所に登ると、ほとんどの人が怖いと感じますが、これは動物として正常なことです。

 

しかし、家庭や会社、学校、近所付き合いなどをはじめ、人前で話をする、周りの視線が気になる、地震などの災害といったものに対し、過度な不安や恐怖を感じたり、その状態がしばらく続くことで日常生活に支障が出てしまうケースがあります。

 

不安障害とは不安な状態を症状とする精神疾患の総称で、代表的なものに社会不安障害やパニック障害、強迫性障害、外傷後ストレス障害(PTSD)などがあります。

 

不安障害の表れ方は様々ですが、たとえば電車やバスに乗れない、会社や学校に行けない、人前で発言する場合に過度に緊張する、またそこに頭痛やめまいを伴うこともあります。

 

不安障害で悩んでいる人がカウンセリングを受けた相談事例


一般的に不安障害を引き起こしやすい人は、

  • がんばり屋、頑固で負けず嫌い
  • 理想がとても高く、完璧主義
  • 些細なことでもこだわりが強い
  • 心配性で何事に対しても敏感に反応する

 

このように、勝ち気な一面と神経質な一面の両方を持ち合わせている性格のため、現実と理想、そして自分とのギャップが生まれやすくなります。

 

またそのギャップが大きいほど精神面での葛藤が強くなり、不安障害を引き起こしやすくなると言われています。

 

実際にカウンセリングを受けたクライアントの相談事例をご紹介します。

 

【相談事例①】不安障害とうつ病、アスペルガーと診断されている女子高校生です。生きているのが辛い私に明るい未来はあるのでしょうか?(千葉県10代女性)

不安障害とうつ病、アスペルガーと診断され悩んでいる女子高校生
私は17歳の高校生で、現在は通信制の高校に通っています。

 

小学生から中学卒業まで友達と言えるような友達を作ることができず、クラスの中でもずっと孤立していました。

 

そういったこともあって、毎日通学して人と顔を合わせる必要のない通信制の高校を選んだのですが、それでも孤立感や孤独感がひどく辛い状態でした。

 

そんな毎日に耐えきれなくなり、半年前に精神科を受診して知能検査も実施しました。

結果は社会不安障害、重度のうつ病、アスペルガー症候群と診断されました。

 

診断結果を伝えられ大きなショックを受けましたが、なぜか心の奥では少し安心していた部分もありました。

 

毎日が憂鬱でとにかく不安でたまりません。

 

たとえば「外出先で知り合いに会ったらどうしよう…」という不安が強くあまり外出はしません。

 

またすごく仲の良い人や家族なら問題ありませんが、人前で食事をするのがとても苦痛に感じます。

 

何か嬉しい出来事があった時は、その場では喜びますがすぐに気分が落ち込んでしまいます。

 

表面上では喜んでいる感じですが、心の奥ではとても深く落ち込んでいるのでストレートに喜ぶことはできません。

 

またあまり人には話しませんが、毎日が憂鬱で辛く苦しいので死にたいという気持ちもあります。

ですが怖くて自分で命を断つということもできません。

 

最近、学校の帰りに駅前で中学の同級生に声をかけられました。

 

同級生とは話すどころか会いたくなかったので、その場からすぐに逃げようと思ったのですが、声をかけてきた人は中学の時に仲が良かったので少し話をすることができました。

 

でも今は誰とも話をしたいと思いませんし、正直外出もしたくはありません。

 

不安と恐怖で毎日が辛く苦しいです。

こんな状況がずっと続くと思うと、私は何のために生きているのだろうと考えてしまいます。

 

私に明るい未来はあるのでしょうか?

【相談事例②】心が弱っている時に不安障害の症状が出てきます。不安と恐怖で心が掻き乱されている私はどう乗り越えていけばいいのでしょうか?(愛媛県20代女性)

不安障害で毎日不安と恐怖に襲われ苦しんでいる女性
接客業をしている26歳の女性です。

中学生くらいの頃から生きづらいと感じていました。

 

最近は特に毎日が苦しくて、生きづらいと感じることが多くなりました。

 

もともとは神経が細くて感受性が強いので、人や周りの空気を読み取れる方だと思っています。

 

でも最近は接客業のコミュニケーションなどに疲れてしまっていて、私にはこういう仕事は向いていないのでは?と思うようになってきました。

 

特に接客中に受ける言葉は一番ダメージが多く、単に罵倒を浴びせてきたり、あからさまに悪意のある意地悪な言葉、人格否定など挙げだせばキリがありませんが、本当に考えられないような非常識な人がたくさんいます。

 

私自身がそういった否定的な言葉を上手に受け流すことができず正面から受けてしまいます。

 

そのため強いストレスを感じることが多く、放心状態になったり心臓がバクバクしてどうしようもなく混乱することが多々あります。

 

そういう時は必ずといっていいほど不安と恐怖が襲ってきて、今までの自分とはまったく違う人になっているような感じになります。

 

ただ自分では心は強いほうだと思っていたので、そのうちなんとかなると思っていました。

 

でも5ヶ月前に同じ職場の友人のすすめで病院を受診したところ、全般性不安障害と診断されました。

 

精神科の先生からは、対象範囲がとても広くあらゆるものに不安を感じるのが全般性不安障害だと説明を受けましたが、たしかに振り返ってみると自分に当てはまることはたくさんあると思います。

 

接客はもちろんですが、学生時代や近所付き合いなど、不安を抱えながらも平静を装って我慢しながら自分ではない誰かを演じるように生きてきました。

 

それは傷つきやすい自分を表に出したくないという思いから無意識に行っていた行為ですが、今となっては本当に何もかもが怖くてどうして良いのかもよく分かりません。

 

心が砕けるくらい悲しくなったり、瞬間的に憎悪が湧いたり、感情のコントロールもできず毎日が辛いです。

 

気持ちが楽になりたいです。

私はこの苦しみをどう乗り越えていけばいいのでしょうか?

【相談事例③】社会不安障害と自閉スペクトラム症と診断されています。母に怯え社会への不安と恐怖から解放されるにはどうしたら良いのでしょうか?(岩手県20代男性)

社会不安障害と自閉スペクトラム症と診断され、日々怯えた生活を送っている20代の男性
私は23歳の男性で母と二人で暮らしています。

 

父は私が8歳の時に脳腫瘍で他界しています。

 

私は物心がつく幼少の頃から毎日のように母に怒られていました。

 

父が他界していて家には私と母の二人きりなので、母を止める人間は誰もいません。

 

たとえば小学校の時に九九が言えないと言えるようになるまで怒鳴られ、漢字が書けなくても怒鳴られ、自転車に乗れないと「やる気がないのか?」と怒鳴られ、転倒しても心配すらしてくれませんでした。

 

また母に言われるがままに、やりたくもないピアノを習わされ、上手に弾けないと怒鳴られ、休日は友達と遊ぶことも許されずに練習を強いられました。

 

さらに母の信仰する新興宗教にも無理やり入信させられるなど、私の意思が尊重されることは一切ありませんでした。

 

そんな母は子供の頃に両親から暴力(DV)を受けていた経験があるらしく、私が母の横暴に対し嫌そうな顔や辛そうな顔をしていると、「恵まれているんだから幸せそうにしろ!」「育ててもらってるんだからそんな顔は見せるな!」「笑え!笑っていないから辛く感じるんだ!」といった感じで怒り狂い怒鳴られます。

 

私が落ち込んでいて、そんな気分でもないのに「私は幸せです」と無理やり100回言わされたこともありました。

 

私はいつ怒り出すか分からない母に対して常に神経を研ぎ澄まし、母の一挙一動にひどく怯えながら生きています。

 

母は普段は優しいのですが、何か気に入らないことや上手くいかないことがあると、途端に人格が変貌し怒りや責任をぶつけてきます。

 

小さい頃は「自分が悪いから怒られるんだ」と思い込んでいましたが、高校生くらいになってくるとさすがにその理不尽さに気がつき始め、ちょうどその頃から胃痛や腹痛、吐き気、下痢、動悸、めまいなどの体調不良に悩まされるようになりました。

 

そしてつい3ヶ月ほど前に、医者からのすすめで心療内科を受診したところ、社会不安障害、さらに自閉スペクトラム症と診断されました。

 

このことを母に話すと、理解は得られず心療内科に通うことも反対されました。

 

最近は母だけでなく、外出や人目に触れることにも不安と恐怖を覚え、発作的に動悸、手の震え、呼吸困難に襲われ、毎日がとても苦しくて仕方ありません。

 

母に怯えながら過ごす毎日と、社会への不安と恐怖に襲われている現実から解放されるにはどうしたら良いのでしょうか?

【相談事例④】妻に内緒で精神科に通い不安障害だと診断されました。家の中に居場所もなく妻の言いなりになっている私はどうすれば良いのでしょうか?(大阪府40代男性)

妻に内緒で精神科に通い不安障害だと診断され、心身ともに悩み苦しんでいる40代の男性
私は43歳で一つ年下の妻と3年前に結婚しました。

妻の他には、妻の連れ子(小学校4年生の女の子)と体外受精で授かった2歳の娘がいます。

 

結婚した当時は私の父親と同居していましたが、妻との折り合いが悪く大げんかの末、私の妹夫婦と住んでもらうことになりました。

 

その揉め事の後に、妻はうちの親戚すべてを敵視して、今後いっさい親戚と付き合うことを禁止してきました。

 

また結婚する際に、妻の母親と祖母を近所で面倒見るために家を借り、父にリフォーム代100万円を借りたのですが妻は返済する気がないようです。

 

家計は妻がすべて握っているので、自分ではどうにもならない状況です。

 

もともと結婚したての頃は、夫婦仲はそれほど悪くはなかったのですが、体外受精で妊娠してから疎遠になり、夫婦の営みもなくほとんど会話すらしなくなりました。

 

妻は複雑な家庭環境で育ったために感情の起伏が激しく、不安や怒りをコントロールできないところがあります。

 

当初は父に返済しなければならないリフォーム代100万円のことや、夫婦間のことについて話し合いをしていたのですが、必ず泥酔して突然キレ出し、暴力を奮ったり物を投げたり壊したりするので、今はもう妻の言いなりのような生活をしています。

 

最近では、妻が娘の授乳中に飲酒や喫煙をしている姿を見かけているのですが、それに対して夫として注意できない自分がいます。

 

本来なら父親である自分が、妻に対して注意しなければいけないことは分かっているのですが、家には常に義母が出入りし妻の味方をするので言いくるめられてしまいます。

 

そんな状況の中、毎日精神的におかしくなってきていると感じ、妻に内緒で精神科を受診してみたところ不安障害だと診断されました。

 

このことを妻に話しても、逆に怒られたり怒鳴られたりするので、不安障害だということは黙って通院している状況です。

 

家の中に私の居場所はありません。

 

最近は、自分は何のためにこの結婚をしたのか?これからどうしていけばいいのか?がまったく分からなっています。

 

常に心が不安で、薬を飲まなければ仕事はおろか寝ることすらできません。

 

毎日が辛いです。

妻の言いなりになっている私はどうすれば良いでしょうか?

【相談事例⑤】小学校3年の息子の不登校(社会不安症)で悩んでいます。母親として息子の将来のために学校に行って欲しいのですが何かいい方法はないでしょうか?(福岡県40代女性)

小学校3年の息子の不登校(社会不安症)で悩んでいる40代の母親
私は47歳の専業主婦で夫と息子(小学校3年生)の3人暮らしです。

 

息子について相談があるのですが、社会不安障害と場面緘黙症(ばめんかんもくしょう)と診断されていて現在不登校です。

 

もともと3歳くらいまでは元気でよく笑い、性格的には臆病で私にベッタリなところはありましたが、どちらかと言えば育てやすい子でした。

 

息子が4歳を過ぎたあたりから、幼稚園の図画工作やお遊戯会を拒否するようになり、参観日になると私にぴったりとくっついて離れないようになりました。

 

この頃から、大勢の前で何かをするというのを嫌がり出しました。

もちろん小学校の入学式も嫌がりました。

 

当時はまだなんとか学校に行ってくれていたのですが、全校生徒の前で歌を発表するという学校行事の練習を嫌がり「学校には行きたくない」と言い出しました。

 

当時の担任の先生が、ヒステリックでよく怒る先生だったのも原因のひとつだったかもしれません。

 

その後は息子の登校に私が付き添うようになり何とか教室には行ってくれますが、学校での活動や行事ごとに怯え、教室から逃げ出してしまうということが起こり始めました。

 

学校からのすすめで発達検査を受けましたが、発達障害ではないという診断でした。

 

息子が言うには、自分のクラスや他のクラスのみんなに見られるのが恥ずかしくて嫌だということです。

 

人からの視線を気にし、写真を撮られるのもとても嫌がります。

行事ごとも苦手なようで、運動会なども拒否するようになりました。

 

とにかく大勢の人に注目されるのが嫌なようです。

 

でも息子の将来を考えると、早い段階で学校に復帰して欲しいと思っています。

また今の状況を長引かせれば長引かせるほど、なかなか学校に行きにくくなってしまうと思います。

 

ただ、息子の社会不安障害や場面緘黙症を改善していかないと、この先なかなか厳しいものがあると思っています。

 

母親として、私は息子に何をしていけば良いのでしょうか?

不安や恐怖を過剰に感じることが日常的になってしまっている不安障害には第三者が必要!薬物治療とカウンセリングの併用療法がおすすめ

不安障害についてカウンセリングをしている女性カウンセラー
いかがでしたでしょうか?

実際にカウンセリングを受けたクライアントの、不安障害で悩んでいる相談事例を5つ紹介しました。

 

それぞれに共通して言えることは「不安や恐怖を感じるが不安障害だとは思っていない」「気持ちが弱っていて問題解決のための行動が取れない」「辛くて苦しい毎日でも我慢して耐えてしまっている」ということです。

 

不安や恐怖に襲われた時、「弱い自分が悪い」「恥ずかしくて相談できない」「何をして良いのか分からない」という、自分を責めてしまうような考えになってしまいがちです。

 

そうすると、それが原因で頭痛やめまい、自分の体でないようなもうろうとした感じや、悪寒、発熱、手足の冷え、便秘や頻尿といった身体症状の他、注意散漫、イライラ、怒りっぽい、疲れやすい、悲観的になる、小さなことが気になる、寝付きが悪く途中で目覚めやすいといった精神症状が起こりやすくなります。

 

そもそも不安障害を発症してしまった場合、言葉だけで治療を進めていくのはとても困難です。

 

心の中の心配事が尽きないうちは、薬物療法で気持ちを和らげ落ち着けていくことが必要になります。

 

薬によって症状が楽になってくると不安を受け止めやすくなるので、次のステップである精神療法と並行して行う流れになります。

 

それにより不安障害の症状を改善していくということになります。

 

今回ご紹介したクライアントの相談事例も、病院できちんと診断を受け薬物治療を行い、カウンセラーとのカウンセリング時間を設けることで問題解決に繋がっていきました。

 

ポイントは「ひとりだけで頑張らないこと」です。

 

自分が安心できる誰かに頼って良いのです。

不安や恐怖を共に共有してくれる誰かに、自分の辛く苦しい気持ちを素直に話せば良いのです。

 

できれば専門の先生やカウンセラーをおすすめしますが、もちろん信頼できる身近な人でも構いません。

 

まずはほんの少しの勇気を出して、自分の今の状況を包み隠さず伝えてみてください。

 

この記事があなたの気持ちを少しでも軽くすることができれば幸いです。

 

<不安障害で悩む人におすすめの参考サイト>