共依存の関係性に陥ってしまい長年悩み苦しんでいる夫婦
公開日:2020年10月25日/更新日:2023年2月25日
監修:遠藤まなみ(代表カウンセラー)

「何とかしてあげたい」「この人がいないと寂しい」「この人には私しかいない」!?なぜ人は辛く苦しい共依存関係に陥ってしまうのか!?


「人に必要とされている」というのは、人が生きていくうえでとても大切なことです。

 

また人に必要とされることで得られる充実感は、人生の生き甲斐となることも多く、生きることに勇気を持てる素晴らしいものです。

 

ところがこの心理が過剰になることで、共依存の関係に陥ってしまうケースがあります。

 

共依存とは、

依存症者に必要とされることに存在価値を見いだし、ともに依存を維持している周囲の人間の在り様。

 

もともとは、アルコール依存症である夫の飲酒問題を何とか解決しようとする妻が、お互い疲れ切っているのにも関わらず、依存しあって離れられなくなり苦しんでいる状態から生まれた言葉です。

 

現在ではアルコール依存だけでなく、ギャンブル依存や薬物依存、買い物依存、インターネット依存、ゲーム依存、恋愛依存、親子依存、上司部下依存など、依存症を持っている人が近くにいる場合、その人と共依存状態になってしまうケースがあります。

 

またDV(ドメスティック・バイオレンス)などでも同じような関係性が認められることがあります。

 

共依存症の怖いところは、一方で「あなたのため」と言いつつ相手を支配しようとしていること、またもう一方では「してくれている」という甘えから相手の機嫌ばかりに気を取られてしまうこと、これらを双方が無自覚でやってしまっているということです。

 

そして共依存の関係は、一方が過度に感情を抑え込み、極端な自己犠牲を行うことで成立しているためとても不健康で、精神的にも身体的にも大きな不調が起きることは少なくありません。

 

共依存で悩んでいる人がカウンセリングを受けた相談事例


共依存となってしまう人には共通する特徴があります。

  • 相手に必要とされることで自分の存在意義を感じる。
  • 相手に尽くすことを優先し自分の感情や行動を犠牲にする。
  • 自己肯定感が低く自分は価値のない人間だと思っている。
  • 相手に問題があっても自分が悪いのが理由だと思っている。
  • 相手をコントロールしたがる。
  • 物事を極端にとらえ、客観的にみることができない。

 

共依存症はお互いが無自覚であることが多く、相手との関係性に悩み、精神面にも身体面にも辛くなります。

 

また感情が混乱し、状況を客観的に見ることができず、「辛いけど離れられない」という形でさらに苦しくなります。

 

こういったように共依存で悩んでしまうケースは非常に多いと思われます。

実際にカウンセリングを受けたクライアントの相談事例をご紹介します。

 

【相談事例①】暴力を振るう彼と仲直りがしたいです。共依存だとは分かっているのですが気持ちが混乱してどうして良いか分かりません。(大阪府20代女性)

共依存のため彼から暴力を振るわれても離れられない女性
私は28歳の女性です。

同じ職場で知り合った彼は37歳で、2年ほど同棲しています。

 

先日彼と喧嘩になり、最終的には「3日以内にここから出ていけ!」と強制退去を宣告されてしまいました。

 

喧嘩の原因は彼に浮気の疑いがあり、証拠を探すために彼のスマホの着信履歴を勝手に見てしまったことで喧嘩になりました。

 

彼の言い分は、浮気のような不貞行為は絶対にしていないし、籍も入れていないのにここまで束縛や監視されるのは納得できないというものでした。

 

また彼は同僚の女性とご飯を食べてきただけと主張し、私に対し殴る、蹴る、平手打ち、物を投げるといった暴力を振るってきました。

 

彼の暴力については今回が初めてではなく、以前から過激な暴力行為を受けていました。

 

もちろん喧嘩をするたびに暴力を受けているのですが、そんな彼でもやはり仲直りしたいと考えてしまっている自分がいます。

 

今回の喧嘩においても、仲直りしたいという気持ちは変わりません。

 

でも今回はいつも以上に怒りが収まらないようで、彼と話しがしたくても相手にされず、自分の気持ちを伝えることができません。

 

本音を言えば、そんな暴力的な彼とはいい加減別れるべきだと思っています。

 

頭では分かっているのですが、私自身がこの環境に慣れ親しんでしまっているせいか、暴力を受けようが酷い言葉を浴びさせられようが、誤り続けることで彼に許してもらえることを期待してしまっています。

 

現在の住居の住心地の良さや、会社までの利便性の良さ、また彼が経済的に安定しているといった利点に甘えたい気持ちが勝り、なかなか別れに踏み切ることができません。

 

今後もし彼と結婚したとして、毎回喧嘩のたびに殴られたり罵られたりしても、泣いて叫んで謝り続けることになるのではないかと感じています。

 

共依存状態の私はこれから先いったいどうしていけばいいのでしょうか?

【相談事例②】元妻や実家に依存して生きてきた自分には行き場が見えません。生涯を地獄のように感じている私はどう生きていけばいいのでしょうか?(京都府40代男性)

元妻や実家の母に依存し、辛くて苦しい毎日を送っている40代の男性
私は48歳ですが1度もまともに働いたことがありません。

子供の頃から内気でおとなしく、控えめでやや神経質な性格でした。

 

人と交わるのは苦手なこともありいじめを受けていた時もありましたが、小中高と特に大きな問題もなく学生生活を楽しんでいました。

 

ところが大学3年の時に統合失調症の診断を受けました。

 

もともと病弱に育ったこともあり、親からは高学歴を求められ中高一貫校に進学しましたが、その後大学に進んでも慢心から落ちこぼれるようになり、自立心や進路の迷いからうつ病にもなりました。

 

精神的に圧迫しているような状況だったので就活やバイトもできず、家賃も滞納するようになってしまいました。

 

その当時は付き合っていた看護師の恋人の実家に転がり込み、そこから引きこもり生活が始まり、3年後に結婚し子供も生まれました。

 

妻に依存した生活を10年近く続けていたのですが、夫婦仲は徐々に悪くなっていき、ある時子供に手を出してしまったことをきっかけに離婚を突きつけられ、34歳の時に離婚しました。

 

そこからホームレス生活を2ヶ月、その後しかたなく親元に帰りましたが強制的に入院させられました。

 

退院後は実家で障害年金を受給しながら福祉関連の作業所に通うことになりました。

ところがそこで、母との共依存を指摘されました。

 

母との依存しすぎた関係性が、統合失調症やうつ病の症状にも影響すると言われたので、単身で50キロ離れた隣の市のアパートに引っ越しました。

 

現在はアパートに引きこもりながら福祉関連の作業所に通う毎日です。

また精神科にも通いながら薬物治療を行っています。

 

慣れない場所への引っ越しや、様々な不安、恐怖、身体のことを考えるとプレッシャーがかかり何の意欲も湧いてきません。

 

最近は楽に早く死んだほうがマシなのかとも考えてしまうことがあります。

 

人生そのものが地獄のように感じている私はいったいどう生きていけばいいのでしょうか?

【相談事例③】母親に束縛されて家を出ることができずに何年も経っています。実家と母から開放されるにはどうすれば良いか教えて下さい。(新潟県20代女性)

母親に束縛されて家を出ることができない共依存の20代の娘
私は実家暮らしで、母と兄の3人で生活(父は単身赴任中)しています。

今にはじまったことではないのですが、母親との関係で悩んでいます。

 

もう随分と長いこと自立して一人暮らしをしたいと思っているのですが、母親に反対・束縛されて家をでることができずに何年も経過しています。

 

普段の生活においては何の問題も感じていません。

周り近所から見ても普通に仲のいい親子だと思います。

 

でも母が買い物などに出かける時に、私が一緒に付き合わないとすねて起こったりすることが多く、逆に私が友人と遊びに出かけたりすると「出かけすぎ!」「帰ってくるのが遅い!」「自分ばかり楽しい思いをして!」などと文句を言われます。

 

もちろん私も母からの言葉で理不尽を感じた時は、不機嫌にもなりますし言い返したりもします。

そういう時、母は決まって論点をずらした話をして誤魔化します。

 

そのうち母が不機嫌になり私のほうが折れることが多いです。

ずっとこういう状況なので、私は早く親離れをしたいし、母にも子離れして欲しいと思っています。

 

ところが以前、母に「一人暮らしがしたい」と言った時、ものすごい勢いで怒り出し「この家で暮らすことがそんなに嫌か!」「ストレスで私が死んだらお前のせいだ!」「私を見殺しにしてここから出ていく気か!」と罵声を浴びさせられました。

 

母に相談しても無駄だと思い、単身赴任中の父や祖母に一人暮らしをしたいと相談すると、それを知った母から「私に内緒で外堀から埋めていく気か!」「性格が歪んでいるこの卑怯者!」と罵られ、結局一人暮らしを断念して今に至ります。

 

最近ではネットで一人暮らしについて調べてみたり、自立させてもらえない体験談を読んだりしているうちに、ひょっとして私は共依存症ではないか?と考えるようになりました。

 

一人暮らしはしたいと思うものの、実際に引っ越しをすることを想像すると心が苦しくなり、母から嫌な言葉を浴びせられたりすることで、結局諦めてしまうということを繰り返しています。

 

実家と母から開放されて自由になりたいのですが、私はどうすればいいのでしょうか?

【相談事例④】ゲームやアイドルで借金する息子と共依存の関係になっています。息子の病気はどこで治せば良いでしょうか?(東京都60代女性)

借金をする30代の息子との共依存関係に悩んでいる60代の女性
私の30代の息子のことで悩んでいます。

 

息子は大学時代には実家を離れて下宿生活をしておりましたが、2年生になった頃からあまり授業に出席しなくなり、友人たちとの麻雀や飲み会などで生活が乱れ、暴飲暴食なども重なり20キロほど激太りしてしまいました。

 

悪化した生活態度はもちろんのこと、授業にきちんと出席することなど何度も話し合いました。

 

ところが、その時は本人を納得させることはできるのですが、しばらく経つとすぐに約束を破り、都合が悪くなると無視をするようにもなりました。

 

その後、熱中するゲームの課金や飲食代にかなりのお金をつぎ込んでいて、クレジットカードのリボ払い残高が150万円以上あることが発覚しました。

 

息子は大学を退学し、借金の150万円を全額親が返済することを条件に実家に戻しました。

 

その後、実家で暮らしながらアルバイトとダイエットを1年くらいして、知り合いの会社に正社員として就職することができました。

 

それをきっかけに、以前の借金返済と生活費という形で、毎月5万円を入れさせていました。

 

ところが会社での飲み会やゴルフなどのイベントも多く、またアイドルの握手会などにもお金がかかるという理由で、5万円の生活費をあまり入れてくれなくなってしまいました。

 

またクレジットカードでお金をたくさん使っているようでしたが、さすがに社会人なので様子を見ることにしていたのですが、5万円の生活費をまったく入れてくれないので、問い詰めてみると以前と同じように100万円以上の残高(借金)があることが発覚しました。

 

仕方がないので、今回も全額親が返済して、息子の給料を管理(毎月5万円の小遣い)して残りのお金はカードの返済に充てるように決めました。

 

息子が作った借金を親が返済するなど、本当はその行為が本人のためになっていないことは十分に理解しております。

 

でも私がいないと息子は駄目な方向に進んでいってしまいます。

 

息子とは共依存の関係になっていることは分かっていますが、息子の病気はどこで治せば良いのでしょうか?

【相談事例⑤】家族経営の会社と父親との共依存から抜け出したいです。どうすればこの悪循環から解放されるか教えて下さい。(青森県40代男性)

家族経営の会社社長である父親との共依存関係で悩んでいる40代男性
私は46歳で未婚、両親(70代)と3人で実家に暮らしています。

 

実家は工場兼住宅で自営業、家族経営の会社(従業員はおらず家族のみ)で働いています。

私は長男で兄弟は弟、妹がおり2人とも結婚して子供もいます。

 

自営なので日常勤務など多少は融通がきく環境なのですが、いつも両親の監視下にあることに大きなストレスを感じています。

 

また仕事中でも会社の跡継ぎや相続の問題、それに独身である私への結婚話などで責められることが多く、日々精神的に辛く苦しい状態が続いています。

 

先日、社長である父と仕事のことで口論になりました。

 

夜中に寝ているところを無理やり起こされ、仕事の説明を話し始めたため、いつもは我慢していたのですが、頭にきて「いきなり夜中に来ていい加減にしろ!」と言いました。

 

すると父が興奮し掴み合いの喧嘩に発展しそうになったため、私が逃げ出し近くの警察に行きました。

 

その時は警察の方の口添えもあり、とりあえずは事なきを得ましたが、家の中はかなり険悪な雰囲気になりました。

 

今の仕事はもともと望んでいたわけではなく、大学院まで進学し卒業後に同大学の職員として勤務していました。

 

ところが人間関係でうつ病になり、勤務3年目で自主退職しました。

そういった事情もあり、実家に戻り現在の実家経営の仕事をずっとしてきました。

 

本当は家を出て就職し、自立した生活を送りたいと思っているのですが、父から怒られたり殴られたりすることを考えると自分では何も決められません。

 

そして自分の人生を自分で決めてこられなかった自分が好きになれません。

毎日毎日心が辛く、どこか狭い世界に閉じ込められ窒息しそうなほど苦しいです。

 

こんなに苦しいのなら、人生もう終わりにしてもいいかなと考えることもあります。

 

私は私でありたいのですが、父との共依存から抜け出すことができず悩んでいます。

この悪循環から解放されるにはどうしたらいいか教えて下さい。

共依存の関係から抜け出すには「自分が共依存であることに気づくこと」が必須!共依存の関係性の改善にはカウンセラーへの相談がおすすめ

共依存の関係で悩んでいる夫婦をカウンセリングする女性カウンセラー
いかがでしたでしょうか?

実際にカウンセリングを受けたクライアントの、共依存で悩んでいる相談事例を5つ紹介しました。

 

それぞれに共通して言えることは「辛いけど離れられない」「その場の感情に流されてしまっている」「物事をネガティブに考えている」といった状態が続き、実はもうすでに共依存の関係性になってしまっていることに気が付かないまま、精神的苦痛に長期間悩まされていることです。

 

怒り、恥ずかしさ、孤独、自責感、絶望など、心が辛いと感じるのは「何かが間違っている」というメッセージです。

 

共依存の関係性は自分で認識することが難しいので、専門のカウンセラーを交えた形で改善を進めていく必要があります。

 

難しいかも知れませんが、まずは自分自身が「共依存」であるということを自覚することが改善の第一歩です。

 

共依存であることを客観的にとらえ、その大きな原因となっている「自分の性格・考え方」を見つめ直す必要があります。

 

また共依存者は、物事に対しネガティブ・悪い方に考えがちな傾向があります。

 

起きてもいないこと(例えば地震や災害、一人で自立できるかなど)に不安や恐怖を感じて心配し、それを自分ではどうにもできないから人に依存してしまうのです。

 

今回ご紹介したクライアントの相談事例も、専門のカウンセラーに相談し、共依存改善のためのカウンセリングを受けることで問題解決に繋がっていきました。

 

ポイントは「将来を悲観しない」「今生きていることに感謝する」「自分の周りの人を尊敬・尊重する」です。

 

たしかに未来のことは誰にも予測はできません。

 

しかし予測できない未来を恐れるのではなく、今生きている幸せに気が付いて、将来が良くなるように自分が行動し選択していけば良いのです。

 

心が辛くて苦しかったら迷わず誰かに頼ってください。

相談してください。

 

できれば専門の先生やカウンセラーをおすすめしますが、もちろん信頼できる友人や知人でも構いません。

 

まずはちょっとだけ勇気を出して自分の想いを包み隠さず伝えてみてください。

 

この記事があなたの気持ちを少しでも軽くすることができれば幸いです。

 

<共依存で悩む人におすすめの参考サイト>