統合失調症が発症し、大学生活に支障が出て悩んでいる女子大生
公開日:2020年11月28日/更新日:2021年11月29日
監修:遠藤まなみ(代表カウンセラー)

「幻覚や妄想」「思考力や判断力の低下」「意欲がなくなる」!?なぜ統合失調症は日常生活に困難をもたらしてしまうのか!?


統合失調症とは原因がはっきりしない精神症状で、内因性精神疾患(精神障害)とも呼ばれる精神疾患のひとつです。

 

およそ100人に1人がかかる頻度の高い病気で、決して特殊な病気ではありません。

 

考えや気持ちがまとまらなくなる状態が続き、幻覚や妄想、思考障害、喜怒哀楽がなくなる、意欲がなくなる、自分の世界に閉じこもる、記憶力や注意力、集中力、判断力の低下といった症状が見られます。

 

日常生活においても障害となることが多く、その行動や言動から「常識がない」「社会性がない」「気配りができない」「怠けている」などと誤解され、人間関係において悪い影響が出てしまうことは少なくありません。

 

発症時期は、思春期から青年期(10歳代後半から30歳代)に多く集中していて、中学生以下の発症は少なく40歳代以降は減少し、ピークは10歳代後半から20歳代と言われています。

 

また発症の男女比率では、男(1.4):女(1.0)の割合で男性の方が多いとされています。

 

統合失調症の原因は、今の所まだ明らかにはなってはいませんが、進学や就職、独立、結婚などの人生の帰路における環境の変化が発症に影響しているケースが多いようです。

 

ただ同じような環境の変化に遭遇しても、大部分の人は発症にまで至らないということから、統合失調症の直接的な原因とはなっていないようです。

 

<統合失調症患者へのインタビュー動画>
統合失調症をより理解して頂くために制作された動画「私の統合失調症を語ろう」では、ひだクリニック院長の肥田裕久氏が聞き手となり、5人の統合失調症患者にインタビューを行っています。

統合失調症で悩んでいる人がカウンセリングを受けた相談事例


統合失調症は発症の前兆があります。

  • 眠りが浅く深く眠れない。
  • 音に敏感になりイライラする。
  • 不安と焦りの気持ちが大きくなる。
  • 集中力が低下し判断力も鈍くなる。

 

これらのような前兆が起こり、不安、孤立、過労、不眠などのストレスが蓄積し症状の悪化が進んでいきます。

 

急性期になると妄想や幻想などを体験するようになり、自分では変だと感じていても病気だとは思えず、過度の不安や恐怖、緊張を感じたり、他人から見ておかしな行動を取ってしまうことがあります。

 

実際にカウンセリングを受けたクライアントの相談事例をご紹介します。

 

【相談事例①】「死ね」という幻聴が聞こえ統合失調症・発達障害と診断されました。毎日自分を責めて自殺を考えてしまう私はどう頑張れば変われるのでしょうか?(東京都20代女性)

毎日自分を責めて自殺を考えてしまうほど悩んでいる統合失調症の女性
私は21歳で両親と3人暮らし(兄は仕事で海外転勤)をしています。

 

普段は週4日アルバイトをしています。

 

高校3年生になった頃に精神的な異常を感じるようになりました。

 

毎日寝付きが悪く、なぜか落ち着かない感じで周りの人や音がとても気になり、いつも不安と恐怖を抱え込んでいる感じでした。

 

また誰もいないはずなのに「死ね」という幻聴が聞こえるようになり、母に相談し精神科を受診した結果、統合失調症・発達障害と診断されました。

 

それから2回ほど入院して、今は薬物治療により症状が治まっていますが、夜になると感情がコントロールできずに涙が止まらなくなったり、自殺したいと思い詰める症状が現れたりします。

 

その反動か、私は19歳の時に出会い系アプリで知り合った男性で処女を捨てて以来、出会い系アプリで色々な男性を知り合ってセックスをするのがやめられなくなりました。

 

出会い系アプリは毎日チェックしていて、多い時は1ヶ月に10人以上の男性とセックスをすることもありました。

 

ただ私はセックス自体嫌いで、特に男性が好きなわけでもありません。

 

男性とセックスした後はとても気持ちが悪く、自分の汚らしい感じや罪悪感、嫌悪感といった感じで心が苦しく、死にたい気持ちでいっぱいになります。

 

でもこんなこともうしないと誓っても、また時間が経つと同じことを繰り返してしまうのです。

 

また最近では「ブスは消えろ」「お前は価値がない」「地獄に落ちろ」といった幻聴が心の中によぎり、そんな自分が大嫌いで死にたくなります。

 

生きていることが本当に辛くて、毎日自分を責め続けています。

本当は自分を好きになりたいし、これ以上自分を傷つける行為はやめたいと思っています。

 

他人に優しくなれる人間になりたいです。

でもどうして良いのか分かりません。

 

私はどう頑張れば今の私から変われるのでしょうか?

【相談事例②】舌打ち音を聞くと心の底からイライラしてしまいます。統合失調症を患いながらストレスを溜めないように生きていくにはどうすればいいでしょうか?(奈良県40代男性)

統合失調症に加え、音嫌悪症(ミソフォニア)で苦しんでいる男性
私は40歳の男性でメーカー勤務をしています。

 

20代の頃に精神的不安で眠れない日々が続いたため、病院で診てもらい統合失調症と診断されています。

 

現在も薬の量を減らしたり中止したりしながら治療を続けています。

 

統合失調症が発覚した頃、その当時の職場に嫌がらせをする従業員がいて、会社内の通路などですれ違ったりするとわざと舌打ちをするということをされ続けてきました。

 

それは私にとってはトラウマとなり、いつしか舌打ちの音を聞くと心拍数が上がりムカムカ・イライラするようになりました。

 

なぜそうなるのかは分かりませんが、舌打ちの音を聞く度に不愉快になり、自分の感情を抑えることができなくなってしまうのです。

 

職場の上司にも相談してみましたが、「舌打ちされたくらいで怒るのはちょっと過敏すぎないか」と諭され聞き入ってもらえませんでした。

 

それ以来、舌打ちの音を聞く度にストレスが溜まりムカムカ・イライラしてしまうので、耳栓をして仕事をするようにしています。

 

しかし会議や打ち合わせなど、従業員同士のコミュニケーションが必要な場所では耳栓をすることができないので困っています。

 

最近では舌打ちだけでなく、身の回りのなにげない音にまで嫌悪感を抱くようになりました。

 

たとえば他人の咳払いやくしゃみをはじめ、爪切り、歯磨き、鼻歌、口笛、げっぷ、あくびといった音にも過剰に反応してしまい、脅威を感じパニックで相手に襲いかかりたい衝動にかられる時があります。

 

たとえるなら、黒板をフォークのような鋭利なもので擦りつけると「キーッ!」という音が出て、たいがいの人は不快な反応を示しますが、私が感じるものはそんな程度のものではありません。

 

日に日に症状が悪化していくので、家族と相談し心療内科を受診したところ、音嫌悪症(ミソフォニア)と診断されました。

 

今のところ会社では耳栓でなんとか対応していますが、上司や同僚など周囲から感じるストレスは計り知れません。

 

このままでは、音だらけの今の職場で仕事を続けていくのはかなり厳しくなります。

本当に困っています。私はどう生きていけばいいでしょうか?

【相談事例③】統合失調症の母の被害妄想がひどく困っています。母と一緒に暮らす毎日が辛く苦しいのですが、私はいったいどうすれば良いのでしょうか?(鹿児島県20代女性)

統合失調症の母親と暮らす毎日が辛いと感じている女性
私は28歳で母と2人暮らしで生活をしています。

 

私には2人の姉がいますが、現在は2人とも結婚をして家を出ています。

父は私が小学校4年生の頃に離婚していて、正直父の顔はあまり覚えていません。

 

母は父と離婚した後、女手ひとつで私たち3姉妹を一生懸命育ててくれました。

そんな母を心から感謝しています。

 

しかし母はもともとコミュニケーションが苦手で、職場の人たちと円滑に仕事をすることができなかったので、なかなか職が安定せず色々な仕事をしていました。

 

またそんな性格だったこともあり、かなりストレスを溜め込んでいたと思います。

頭痛やめまい、吐き気、手足のしびれ、そして円形脱毛症などの症状が出ていました。

 

ここ数年では、それらの症状以外にも変わった症状(被害妄想や思考障害のようなもの)が出てくるようになりました。

 

たとえば「職場で臭いと言われる」と言い出し、そのうち「近所の人やすれ違う人まで私のことを臭いと言っている」とも言い出しました。

 

また私が何も言っていないのに「お前が悪い」「お前は馬鹿だ」「ここから出ていけ」という声がしたとか、何かブツブツ言ったり、意味もなくニヤニヤしていたりすることがありました。

 

また、たまに母との会話が成立していないようなこともあったので、母を連れて精神科の先生に診てもらったところ、統合失調症だと診断されました。

 

その後、投薬治療をはじめて症状は少し落ち着いてきましたが、最近になって薬が本当に効いているのか?と思えるくらい、また以前のような症状が出てくるようになりました。

 

「隣の○○さんが盗聴していて私は警察に逮捕される」「近所ですれ違う人に紛れて誰かが私を襲おうとしている」「買い物に行くといつも誰かが私を尾行している」といったように、わけの分からないことを話すことが多くなりました。

 

2人の姉に母のことを相談しても、家庭があるから関わりたくないと言われました。

私は母と2人暮らしなので、正直気が狂いそうな毎日を過ごしています。

 

私自身、腹が立って母に暴言を吐いてしまうこともあります。

どうしても母に優しくすることができません。

 

私は母に対して何をしてあげれば良いのでしょうか?

【相談事例④】統合失調症ですが精神科の先生に恋をしてしまい辛いです。妄想で不安と恐怖が襲ってくるのですが、私はどうすればこの苦しみから救われるのでしょうか?(岡山県30代女性)

精神科の医師に恋をしている統合失調症の30代女性
私は父と母と実家で一緒に暮らしている32歳の女性です。

 

週5日のアルバイトをしていましたが現在は無職です。

統合失調症のため2週間に1回の頻度で精神科に通院しています。

 

実は私が通院している精神科の先生に恋をしてしまい辛く苦しいです。

 

6ヶ月前から担当医が代わり、はじめのうちは男性として意識していなかったのですが、色々と話を聞いてもらっているうちに段々と好きになってしまいました。

 

最初は先生に対して恋愛感情を持っていられるだけで幸せを感じていました。

 

もちろん先生との恋愛が成就することなんて不可能だし、それで十分だと自分でも納得していると思っていました。

 

しかし妄想の症状が日に日に強くなって、先生も私のことが好きなのだと信じ込み、先日の診察の時に思い切って告白してしまいました。

 

その時は少し驚いたようでしたが、それ以来先生の態度が急に冷たくなり、そのたびに死にたいほど心が落ち込んでしまいます。

 

その反動で家に帰ると、すぐに出会い系サイトで男性とコンタクトを取り、見知らぬ男性を会ったりしてしまいます。

 

先生に冷たくされると、上辺だけでも良いから男性からの優しい言葉が欲しくなってしまうからです。

 

友人に相談すると、「先生が優しいのは仕事だからだよ」「先生は誰にでも優しいんだよ」「患者は恋愛対象にはならないよ」と言われます。

 

でもどうしても自分をコントロールすることができません。

 

先生は今まで知り合ったどんな男性よりも温かくて優しくて素敵なので、恋愛感情を抱くこと以外考えられません。

 

先生に対し恋愛妄想に突っ走ってしまう自分も怖いし、冷たい態度を取られて精神的に不安になることも怖いです。

 

最近は体調の波も激しくなり、眠りも浅く、たまに幻聴も聞こえたりします。

 

毎日のように不安と恐怖が襲ってくるのですが、私はどうすればこの苦しみから救われるのでしょうか?

【相談事例⑤】娘が統合失調症と診断されてから3年が過ぎました。娘に対しイライラしてしまうのですが、私は娘とどう向き合っていけばいいのでしょうか?(大阪府40代女性)

統合失調症の娘に対してイライラしてしまう母親
私は夫と娘、同居の母との4人で暮らしている48歳の専業主婦です。

娘は現在21歳で大学進学のために予備校に入っています。

 

娘が高校1年生の夏休みの終わりに「宿題が全然終わっていない、できない」と泣き言を言い始めました。

 

結局夏休みの宿題を終わせるために学校を1週間も休んで登校したものの、学校から帰ってくると「頭の中がグルグル回っているみたい」「学校で普通に人と接することができない」「なんか変だから病院で診てもらいたい」と言い出しました。

 

翌日娘を連れて総合病院に行き、症状などを説明すると精神科を勧められ、精神科を受診したところ統合失調症という診断になりました。

 

医師からは「体型抗精神病薬を使います」「とにかく寝たいだけ寝かせ休ませてください」「刺激を与えないようにしてください」と言われました。

 

でも私は統合失調症という病名など知らず、寝てばかりいる娘に毎日のように嫌味や小言を言っていました。

 

その後症状は少しずつ回復し、なんとか寝てばかりの引きこもり状態を抜け出し、担任の先生のご配慮のおかげで何とか高校を卒業することができました。

 

その後。大学進学を目指し予備校に入学しました。

 

ただ症状が良くなってきたとは言え、予備校に登校する朝になると急に「今日は休む」と言い出したりします。

 

それに対し私もイライラしてしまい、言わなくて良いことまで言ってしまいます。

 

娘は統合失調症を抱えながらも頑張っていて、まったくやる気がないというわけではないのですが、苦手に感じることには心身が対応できないのだと思っています。

 

でも一方では、娘に対し「自分が決めたことをコロコロ変える?」「もう少し頑張ることはできないのか?」「そんな娘が重荷でイライラしてしまう」と考えてしまう自分もいます。

 

娘を黙って見守ることができない私は、母として未熟なのは十分に承知しています。

私は娘とどう向き合っていけばいいのでしょうか?

「統合失調症の兆候」を感じたら迷わず専門医に相談することが重要!薬物療法とカウンセリングの併用療法がおすすめ

女性クライアントに統合失調症改善のカウンセリングを実施している女性カウンセラ-
いかがでしたでしょうか?

実際にカウンセリングを受けたクライアントの、統合失調症が原因で悩んでいる相談事例を5つ紹介しました。

 

それぞれに共通して言えることは「自分に異常を感じても早い段階で対応していない」「専門機関に相談せずにストレスを溜め込んでいる」「統合失調症という病気、また治療についての知識がない」ということです。

 

そもそも統合失調症の経過は、前兆期、急性期、消耗機(休息期)、回復期に分けられるため、とにかく時間をかけて治していく必要があります。

 

基本的に統合失調症と診断された場合、代表的な治療法は薬物治療&精神科リハビリテーションと言われています。

 

薬物療法で症状を改善し再発を予防します。

 

また精神科リハビリテーションでは、デイケアや作業療法士の指導、生活技能訓練、心理教育などのプログラムを、医療機関や地域の保健福祉センターなどで受けることができます。

 

さらに統合失調症は心の病気なので、精神面のケアとしてカウンセラーからカウンセリングを受けることも改善効果があります。

 

今回ご紹介したクライアントの相談事例も、病院できちんとした診断を受け、処方された薬物治療を行い、カウンセラーとのカウンセリング時間を設けることで問題解決に繋がっていきました。

 

ポイントは「今の自分の状況を素直に受け入れ症状を知ること」です。

 

統合失調症は再発しやすい病気で、いったん症状が落ち着いても長期に渡って治療を継続していく必要があります。

 

症状が落ち着いたからと言って薬物治療をやめてしまうと、「以前より症状がひどくなる」「薬が効きにくくなり回復に時間がかかる」「再入院となる」といったように非常にリスクが高くなります。

 

不安や焦り、恐怖、気分が変わりやすい、眠れない、そして幻聴や幻覚などの兆候があった場合、迷わず誰かに相談してください。

 

できることなら専門の医師やカウンセラーをおすすめしますが、もちろん信頼できる身近な友人や知人でも構いません。

 

まずはほんの少しの勇気を出して、自分の今の状況を包み隠さず伝えてみてください。

 

その一歩が、自分らしい生活を取り戻し、生き甲斐、将来の希望や夢に繋がっていきます。

 

この記事があなたの気持ちを少しでも軽くすることができれば幸いです。

 

<統合失調症で悩む人におすすめの参考サイト>