公開日:2020年10月26日/更新日:2023年3月4日
監修:遠藤まなみ(代表カウンセラー)
「アルコール」「タバコ」「薬物」「ギャンブル」「買い物」「セックス」「ゲーム」!?なぜ人はやめたくてもやめられない依存症に陥ってしまうのか!?
人が生きていくうえで「嗜(たしな)む」という行為は、人生を豊かにしていくうえでとても大切なことです。
たとえばお酒やタバコ、ギャンブルなども「嗜む程度が良い」とされています。
ところが嗜むという枠を大きく超えて、やめたいと思ってもやめられない状態、つまり「依存症」に陥ってしまうケースがあります。
依存症とは、
特定の何かに心を奪われ、「やめたくても、やめられない」状態になること。
また依存症は大きく2つに分類することができ、ひとつは「物質依存」で、もうひとつは「プロセス依存」になります。
物質依存は、たとえばお酒やタバコ、薬物、カフェインなど、物質そのものに依存するもので、プロセス依存はギャンブル、買い物、万引、暴力、セックス、ゲームなど、その行為によって快楽を得るため何度もそうした行為を続けてしまいます。
そういった特定の物資使用やプロセス行為を繰り返すことで、それが身体的・精神的になくてはならない状態となります。
「やめたくてもやめられない」
つまり自分ではコントロールができなくなり、その結果自分自身を傷つけ、さらに周囲の人まで巻き込むなど社会生活が困難になる問題が出てきます。
生活のリズムは崩れ体調が悪くなり、お金を使いすぎるようになり、仕事や人間関係、また家族間でのトラブルも増加する傾向になります。
また社会的な犯罪の背景に、依存症の問題が深く関係しているケースも多々あります。
依存症で悩んでいる人がカウンセリングを受けた相談事例
ではどうして「やめたくてもやめられない」という依存状態になってしまうのでしょうか?
その鍵は「脳」にあると言われています。
依存の元となる物質や行為を得ることで、脳内にドーパミンという快楽物質が分泌され、それが快楽や喜びにつながります。
そしてこの感覚を脳が報酬(ご褒美)だと認識すると、その報酬(ご褒美)を求める回路が脳内にできあがります。
そしてその報酬(ご褒美)を得ることが最優先となり、自分をコントロールすることができなくなってしまいます。
こういったように、依存症に陥り苦しんでしまうケースは非常に多いと思われます。
実際にカウンセリングを受けたクライアントの相談事例をご紹介します。
【相談事例①】強迫性障害やアルコール依存症から抜け出したい。毎日が辛く生きている心地がしない私はどうすれば良いのでしょうか?(福島県50代男性)
私は57歳の男性です。
子供の頃から恐怖心が強く、気分の浮き沈みも激しい性格でした。
学校での生活では目立った行動もなく、友人とも普通に付き合っていたと想います。
ただ中学に入ったくらいから、親の期待も強くなり、毎日のように勉強漬けの日が続き大きなストレスを感じていました。
その後、なんとか超一流と言われる大学に滑り込みで入ることができたのですが、入学後は授業に出られずサークルやコンパを中心とした生活をしていました。
その頃から毎日あびるようにお酒を飲んでいます。
ちなみに大学では研究者を目指していたので、少しずつ授業に出ながら単位を取得し大学院にも進学することができました。
でもその頃から加害の強迫観念が強く残るようになり、不潔恐怖や確認恐怖など不安やこだわりが度を越してしまうようになりました。
その後大学院も卒業し研究者として仕事に没頭し、それなりの実績をあげてきました。
40歳を過ぎた頃に予算数十億園の大きなプロジェクトを任されたのですが、それがギリギリのところで他の同僚に出し抜かれることになり、それが原因でうつと診断されました。
たまに軽躁がでることもあり、今では双極性障害の診断も受けていますが、この数年はずっと抗うつ状態が続いています。
それから十数年、その当時のプロジェクトの心理的ダメージで研究自体もスランプに陥り、思うように実験もはかどらず毎日管理書の部屋に引きこもっています。
仕事が終わり家に帰ると、恐怖感や不安感を紛らわすために、布団に入った状態でお酒を飲んでいます。
お酒飲んでいる時だけは、なんとなく心が軽くなるのでお酒をやめることができません。
本当は強迫性障害も軽くしたいし、できることならお酒もやめたいと思っています。
でもどうしても自分でコントロールができず毎日が本当に辛いです。
私はいったいどうすれば良いのでしょうか?
【相談事例②】身近な男性や知り合った男性とすぐに関係をもってしまいます。男性不信とセックス依存で悩んでいる私を助けてもらえませんか?(兵庫県20代女性)
私は23歳の女性で、幼少期に父と母が離婚したのですが、父のギャンブル症が原因で生活がままならなかったので祖母(父の母)に引き取られ育てられてきました。
その後いつの頃からか、わけの分からない行動や言動がやめられず、男性不信とセックス依存症を何度も繰り返していて悩んでいます。
幼少時代の父からの影響なのか、男性に対して常に心の中で見下したり恨んだりしています。
そして身近な男性に対して、暴言を浴びせたり、酷い仕打ちを与えてしまいます。
それにも関わらず、身近な男友達や男性の知り合い、その他バーや合コンで知り合った男性とすぐに関係をもってしまいます。
特に性欲があるというわけではないのですが、相手が男性というだけで関係をもちたい気分になってしまいます。
そして決まって関係をもった後は、たとえようのない絶望感や怒り、悲しみが襲ってきます。
そのような行動を取った時は、決まって帰りすがらに泣きじゃくり、正気を保つために安定剤を大量に服用しています。
最近では、いつものように飲み会で知り合った男性とその日のうちに関係をもってしまい、その帰り道では自分への罪悪感と男性への憎しみがピークに達し、建物の3階の非常階段から飛び降りてしまいました。
気がつくと病院のベッドで寝ていて、足を骨折していました。
また男性と関係ももってしまった後に、自分のお腹を殴ったり、鏡の前で自分を写しながら何時間も泣き続けたりと、変な行動を取っている自分がいたので精神科にも通っています。
こんな毎日はもう本当に嫌なので、一日も早くなんとかしたいと思っています。
私の男性不信とセックス依存症はどうすれば治るのでしょうか?
【相談事例③】仕事中にパソコンでついネットを閲覧してしまいます。会社をクビになる前にネット依存症をなんとか克服したいです。(東京都30代女性)
人材派遣会社で10年近く働いている32歳の女性です。
深刻なネット依存症で悩んでいます。
派遣先での仕事が忙しい時は問題ないのですが、仕事中にちょっとした空き時間があるとついついネットを閲覧してしまいます。
休憩中に自分のスマホでネットを閲覧するなら何の問題もないのですが、仕事中に見てしまうのは派遣先のパソコンです。
ネットに依存してしまう理由はだいたい分かっていて、それはSNSで宣伝した反応が気になるあまりつい頻繁にネットを見てしまうのです。
人材派遣とは別にダブルワークで夜の仕事(キャバクラ)をしています。
お客さんを確保するためにSNSで宣伝するのですが、その反応が気になってしまい、仕事中にも関わらずネットでSNSをやってしまっています。
さらに問題なのが、この行為が何度か派遣先にバレていて注意を受けていることです。
注意を受けた時は「もう二度と仕事中にネットは見ない」と誓って、しばらくは大丈夫なのですが、何日かが経過するとまたいつものよう戻ってしまいます。
派遣先の会社は、うちの人材派遣会社にかなり依存していて、過去にたくさんの人が派遣され、問題を起こす人も何人かいましたが、何のお咎めもなく、その派遣先から契約解除を言い渡された人はいません。
もしかしたら、自分の心のなかで無意識に「どうせクビにされることはない」と思っているのかも知れません。
周りの人の目もあり、仕事中に派遣先のパソコンでネットを見てしまうのをなんとかやめたいと思っているのですが、どうしても自分でコントロールできません。
このままでは、いつか仕事を失ってしまうのではないかと不安や恐怖に襲われる時もあります。
私はどうすればネット依存症から抜け出すことができるのでしょうか?
【相談事例④】このままだと仕事や家族などすべて失いそうで怖いです。性依存症を治すために私はいったい何をすれば良いのでしょうか?(宮崎県30代男性)
私は38歳で妻と子供2人の4人暮らしです。
私は今、自分が自覚している依存症で悩んでいます。
それは性依存症で、そのことが原因で妻との関係もギクシャクしています。
私は幼少の頃から女性やSEXに対して興味という範囲を超えて、異常なまでに執着にする性格でした。
小学生の頃にはアダルト雑誌やアダルトビデオをよく見ていました。
そしてインターネットが普及するとアダルト動画にのめり込むようになりました。
アダルト動画では、特に盗撮サイトでの動画にとても興奮し、毎日のようにサイトで盗撮画像を見るようになりました。
はじめの頃は盗撮画像を見るだけで満足していたのですが、スマホのアプリが改良され無音カメラに設定できるようになったタイミングで自分でも盗撮をするようになりました。
盗撮する時はドキドキしますが、成功するたびに心の奥深くから興奮し、溢れ出る優越感に浸れます。
その快感を覚えてしまうともうやめることはできません。
どこかで「自分なら絶対にばれない」と思っていたこともあり、仕事がない休日のたびにあちらこちらに出かけ盗撮を繰り返していました。
そして3ヶ月ほど前に、ついに盗撮しているところを現行犯で逮捕されました。
警察官には「次にまた盗撮したら実刑だからね!」と言われ、「もう2度と盗撮はしない」と約束して帰宅しました。
自分の犯した罪で、妻や子供に迷惑をかけ深くきずつけてしまったと思っています。
でもあれから3ヶ月経った今、あの盗撮が成功した時の興奮や快感が忘れられず毎日悩み苦しんでいます。
またやれば今の場所には住んでいられないし、私のせいで子供たちも「犯罪者の子供」となってしまいます。
もちろんそんなことは十分に分かっているのですが、どうしてもあの時の興奮や快感を思い出すと、自分をコントロールできなくなってしまいそうで不安です。
このままだと仕事だけでなく家族も失いそうで怖いです。
性依存を治すために私はどのようにしたら良いのでしょうか?
【相談事例⑤】将来への不安や容姿コンプレックスから買い物がやめられません。買い物依存症をやめることはできるのでしょうか?(大阪府20代女性)
私は28歳のフリーターです。
10年ほど前から境界性人格障害を患っていて、気分の波が激しく感情が不安定で苦しんでいます。
大学には進学したのですが、境界性人格障害が元で中退しました。
その後はフリーターや水商売をしたりしながら、現在は資格試験の勉強をしながら派遣社員として働いています。
以前は精神的な苦痛から自傷や自殺を図ったりして、周りの人にたくさんの迷惑をかけてきましたが、今は試験に向けて前向きに勉強していることで穏やかな日常を過ごしています。
ただこのところ自分をコントロールできず、美容への執着心や衝動から、お金がないのにも関わらず化粧品や食品など買い物がやめられません。
金額が高価でなかったとしても、ひとつの商品を複数(2~3個)で買うため結局高額になってしまいます。
また最近では美容クリニックなどにも通い始めてしまいました。
自分磨きのために美容クリニックに通うことは、高揚感や満足感もあるのでやってみてもいいとは思いますが、金額などの限度が分からず困っています。
もちろん自分がしている行動やお金の使い方に矛盾があることは分かっているのですが、気がつくと買い物がしたくて自分をコントロールすることができません。
普段はタバコを1日1箱以上吸います。
また高カロリーなものをたくさん食べながら、美容クリニックに通っています。
髪の毛は痛み、バッグや服はボロボロなのに、肌につける化粧品は何種類も買う。
自分がなぜこんな意味不明なことをしてしまうのか分からないし、なぜかやめることができないのです。
将来への不安や容姿コンプレックス、自分はいったい何者なのか、心の中がぐちゃぐちゃでどうしていいのか分かりません。
買い物依存症をやめることはできるのでしょうか?
私は普通の人間に戻ることはできるのでしょうか?
依存症から抜け出すには「自分が依存症であることに気づくこと」が必須!精神科とカウンセリングの併用療法がおすすめ
いかがでしたでしょうか?
実際にカウンセリングを受けたクライアントの、様々な依存症で悩んでいる相談事例を5つ紹介しました。
それぞれに共通して言えることは「気が付かないうちに依存症状になっていた」「依存症だと気が付いてもやめられない」「相談するまでが遅い、または相談しない」ということです。
本人がどれだけ反省や後悔をしても、また周囲がどれほど注意しても、また同じ行為を繰り返してしまうのは「脳の問題」だからです。
決して「根性がない」だとか「意志が弱い」ということではありません。
依存症は条件さえ揃ってしまえば、どんな人でもなる可能性がある病気です。
特別な人だけがなる病気ではないのです。
決して簡単なことではありませんが、まずは自分自身が「依存症」であることを自覚することが治療の第一歩です。
依存症は高血圧や糖尿病と同じく慢性疾患と言われています。
そのため焦らず時間をかけ、自分の症状としっかり向かい合っていく必要があります。
また依存症はひとりで回復することはとても困難で、様々な助けが必要となります。
もし自分が何かに依存した状態で悩んでいる、困っている、苦しんでいるのだとしたら、一人で抱え込まずに今すぐ誰かに相談してみてください。
今回ご紹介したクライアントの相談事例も、精神科できちんとした診断を受け、カウンセラーとの時間を設けることで問題解決に繋がっていきました。
ポイントは依存していたことを「やめ続ける」ということです。
たとえばお酒やギャンブル、薬物使用に依存していたとしたら、今後は「それに頼らない生き方をしていく」ということです。
たしかに、一度でも脳の中に報酬(ご褒美)を求める回路ができあがってしまうと、脳を以前の状態に戻すのは難しいと言われていますが、周りの協力を得ながらやめ続ける生活をしていけば、徐々に回復し問題のない社会生活を営むことも可能になります。
一人で抱え込もうとせず、また自分を諦めないでください。
そして今すぐ誰かに相談してみてください。
できれば専門の先生やカウンセラーをおすすめしますが、もちろん信頼できる友人や知人でも構いません。
まずはちょっとだけ勇気を出して話して自分の気持ちを伝えてみてください。
この記事があなたの気持ちを少しでも軽くすることができれば幸いです。