うつ病が発症し、会社の業務に支障が出て悩んでいる男性社員
公開日:2020年12月6日/更新日:2021年11月29日
監修:遠藤まなみ(代表カウンセラー)

「何をしても楽しくない」「気分が落ち込む」「眠れない」「死にたくなる」!?なぜうつ病患者は右肩上がりで急増しているのか!?


近年、精神疾患より医療機関にかかる患者数は大幅に上昇しており、平成29年では400万人を超えるというデータが出ています。

 

中でもうつ病に関しては著しい増加がみられ、同じく平成29年では130万人に近い人がうつ病と診断されています。

 

うつ病は、楽しくない、何もやる気が起きない、気分が強く落ち込み憂うつになるといった精神的な症状の他、体がだるい、疲れやすい、眠れない、食欲がないといった身体的な症状が現れることがある脳の病気です。

 

日常生活の中で気分が憂うつになったり、心が落ち込んだりすることは誰にでも経験があることです。

 

また人間関係が思うようにいかず悩んだり、仕事や試験で失敗してしまったり、愛情を注いでいたペットや大切な人との別れが原因で、辛く悲しい気持ちになるのも誰もが経験する感情です。

 

これらの感情は原因が解消したり、またある程度の時間が経過することで、次第に心が癒やされ元の状態に回復していくものです。

 

ところがうつ病の場合は、心が深く落ち込んだり辛く悲しい気持ちになるような原因もなく、たとえ原因となっていた問題が解消したとしても心が元の状態に回復しません。

 

つまりうつ病は、心が深く落ち込み辛く悲しい気持ちがずっと続く状態です。

このような状態に陥ると、仕事や学校どころか日常生活自体に大きな支障が出てしまいます。

 

<うつ病についての解説動画>
うつ病をより理解して頂くために制作された動画「人はなぜ鬱病(うつ病)になるのか? その本質的な原因とは。」では、一義流気功治療院の小池義孝さんがうつ病を論理的に分かりやすく解説しています。

うつ病で悩んでいる人がカウンセリングを受けた相談事例


うつ病がどのようなプロセスで発症するのかについてはまだ解明されていません。

 

しかし感情や意欲といったものは脳が生み出すものなので、その脳の働きに何かしらの異常が起きていると考えられます。

 

一般的にうつ病になりやすい人(性格、気質)は、

  • 真面目で責任感が強い。
  • 完璧主義で人からの評価も高い。
  • 凝り性でいつも自分に厳しい。
  • 道徳観も強く周りの人に気を使う。

 

と言われています。

 

また会社や学校、PTA、ママ友などの集団内でのいじめ、仕事や試験での失敗、離婚や失恋、家族や親しい人との死別といった悲しい出来事だけでなく、進学や就職、昇進、結婚や妊娠、出産、また引っ越しや家の新築など、自分にとって喜ばしい出来事だとしても、環境が大きく変わることでストレスが生じ、うつ病を発症させるきっかけとなるケースもあります。

 

実際にカウンセリングを受けたクライアントの相談事例をご紹介します。

 

【相談事例①】うつ病の診断で1ヶ月の休職中ですが、あと1週間で休職が終わると思うと動悸が激しくなり恐怖心が湧いてきます。助けて下さい。(東京都40代男性)

うつ病の診断で会社を1ヶ月休職している40代の男性
私は現在47歳で会社を休職しています。

 

3ヶ月ほど前から、会社に出社すると動悸や吐き気、また何を食べても味がよく分からない(味覚障害)が発症し始めました。

 

はじめは疲労やストレスの問題だと判断して仕事を続けていましたが、日に日に気分が落ち込むようになると同時に集中力もなくなりミスが増えてきました。

 

その後、私が原因で取り引き先とのトラブルが起こり、会社に対して大きな損失を出してしまいました。

 

私は自分自身に異常が起きていると思い、精神科を受診したところうつ病と診断されました。

うつ病の原因はひとことで言えば会社の人間関係です。

 

今の職場は仕事にやりがいもあり成果を上げる喜びも感じることができるのですが、上司のパワハラや執拗な注意、また時には怒鳴ることも多々あります。

 

職場はピリピリした独特の緊張感があり、常に上司への恐怖心と格闘しながら仕事をしているような状況です。

 

ここ1年の間にも数名がうつ病で休職、退職をしていて、現在でも何人かはうつ治療の薬を飲みながら働いている人もいます。

 

うつ病と診断された後1ヶ月間の休職に入り、今日で3週間が経過しました。

 

休職に入ったはじめの頃は、「会社に行かなくていい」「上司と顔を合わせなくていい」「上司のパワハラを受けなくていい」という安心感から気持ちが楽になり、外に出て散歩するなど気分は前向きになっていました。

 

ところが休職も残り1週間だと意識した途端に、気持ちに余裕がなくなり以前のような激しい動悸や恐怖心が溢れてくるようになりました。

 

会社に復帰したら、また同じようにピリピリした環境で上司に怒鳴られるのではないか?と考えると食事もとれず夜も眠れません。

 

もちろん休職を延長することもできると思いますが、長くなればなるほど会社に復帰するのが難しく、また周囲にどんな風に思われるか分かりません。

 

とにかく今は会社に行くのが怖くて仕方ありません。

自分では本当にどうしようもできない状況です。助けて下さい。

【相談事例②】うつ病で治療中の父親との同居で私もうつになりそうで不安です。精神的に不安定で生きているのが辛いのですが、私はどうしたらいいのでしょうか?(滋賀県20代女性)

うつ病の症状が出始め、頭痛や動悸、吐き気に悩まされている20代の女性
私は25歳の女性で、現在父親と母親の3人で暮らしています。

 

私は大学を卒業後に就職して実家から通勤しています。

父親はうつ病と双極性障害で10年以上治療をしています。

 

また父親は機嫌が悪くなると叫んだり怒鳴ったり、時には暴力もするような感情コントロールができない人でした。

 

私が子供の頃からそうで、たとえば夕食の献立が気に入らないと、母親に対して怒鳴り手を出したりします。

 

その怒りの矛先は子どもの私に向けられることもありました。

 

父親から怒鳴られたり暴力を振るわれたりするのはとても嫌でしたが、それ以上に大好きな母親が怒鳴られたり殴られたりするのがとても苦痛でした。

 

そのため、常に父親の機嫌を伺いながら怯えて生活していました。

そんな状況はずっと続いていて今もほとんど変わりません。

 

私は幼い頃から今までずっと、父親の独断的な性格に振り回されて育ってきました。

その影響か仕事も楽しいとは思えず、毎日の生活に充実感がありません。

 

また職場の人間関係も決して良好だとは言えず、気分が深く落ち込んだ状態で帰宅することが多いです。

 

そして家に帰れば父親がいるので、私が安心できる場所はありません。

 

もちろん家を出て父親から離れて生活したい気持ちもありますが、幼少の頃からいつも私を影で支えてくれた母親を見捨てて出ていくことはできません。

 

最近では、会社でのストレスやイライラ感に加え、父親の怒鳴り声や暴力で精神的におかしくなってきていると感じています。

 

頭痛や動悸、めまいが起こることが多くなり、食欲がなくなり、夜も眠れないせいか生理不順になり、ぼんやりすることも多くなりました。

 

こんな地獄のような生活が続くのかと考えると、何も考えることができなくなり不安と恐怖でいっぱいになります。

 

精神的に不安定になっている私はいったいどうしたらいいのでしょうか?

【相談事例③】うつ病と診断され3年以上薬物治療を受けています。自分の将来に絶望を感じて死を考えてしまう私に救いの道はあるのでしょうか?(千葉県20代男性)

うつ病と診断され3年以上薬物治療を受けている20代の男性
私は現在23歳で医学部所属、来年から病院で研修医として働く予定です。

20歳の時に理不尽なことや嫌なことが沢山あり、うつ病と診断されて薬物治療を継続しています。

 

私がうつ病になったきっかけは、大学1年から所属している文化系のサークルです。

 

サークルに入ってしばらくすると、先輩からサークルメンバーの管理という重要な役割を与えられました。

 

重要な役割といっても、やることはサークルの大会や飲み会などのイベントやメンバーの出欠を管理などです。

 

はじめは先輩に見込まれたのが嬉しかったのですが、150人を超えるメンバーを自分ひとりで管理するのは時間的にかなり難しく無理に等しい状況でした。

 

たとえば飲み会の予約から150人を超えるメンバーへの出欠確認など、期限までに回答してくれるのは半数くらい、それ以外は一人ひとりの個人に連絡を取らなくてはなりません。

 

そのため毎日大学には通い授業を受ける講堂にはいましたが、先生の授業を聴くことはできず、パソコンを開いてサークルの仕事をしなくてはならない状況でした。

 

もちろんサークルの先輩に状況を話しましたが、「俺も通ってきた道だから大丈夫」としか答えてくれず、状況が変わることはありませんでした。

 

そんなことがしばらく続いていたある日、頭痛やめまい、耳鳴りが起こるようになりました。

また夜は眠れず心臓はバクバクし、気分が深く落ち込むことが続きました。

 

そんな状況を見ていた友人の勧めで、大学病院の精神科で受診してみるとうつ病の診断を受けました。

 

授業も受けられないほどの膨大なサークルの仕事、つらい状況を説明しても助けてくれない先輩、身勝手で文句ばかりのサークルメンバー。

 

そんな中でいつしか私は先輩やサークルメンバーを激しく恨むようになっていきました。

 

また同時に自分の将来や目標に絶望を感じ、死んでしまいたいとも考えるようになってしまいました。

 

普通の人から見ればほんの些細なことなのかも知れませんが、私にとっては辛く苦しい毎日に何の希望も持てない状態なのです。

 

こんな追い詰められた私に救いの道はあるのでしょうか?

【相談事例④】うつ病の息子のことで悩んでいます。将来ひとりで自立できるようになって欲しいのですが、私は息子とどう向かい合っていけば良いのでしょうか?(大阪府50代女性)

うつ病の息子の将来について悩んでいる母親
私は夫と息子(21歳)の3人暮らしをしています。

息子は第一志望の大学に合格できず、学生浪人となりすでに3年目に入っています。

 

息子は高校2年の時にうつ病と診断されました。

現在も投薬と定期的な通院は続けています。

 

そもそも息子がうつ病になったのは学校での人間関係です。

先生を含めクラス全体が息子にとってかなりのストレスだったようです。

 

たとえば外見(顔や体の特徴など)のことをあからさまに指摘されたり、運動が苦手なことで変なイメージのあだ名(運動音痴ということでウンチッチ)を付けられたり、また息子のネガティブなうわさ話を学校中に広められたりしました。

 

当時の私たち夫婦は、息子が学校でそういった集団いじめのような目にあっているということはまったく知らず、また息子も静かで穏やかな性格なうえ、学校での話をあまりする子ではありませんでした。

 

おそらく学校で辛い目にあっていても、ずっと自分の心の中にしまい込んで我慢していたのだと思います。

 

ところがある時、息子の様子がおかしいことに気が付きました。

 

それは「何に対してもやる気が出ていない」「喜んだり悲しんだりの感情がない」「ぼんやりすることが多くなった」といったものです。

 

私が「学校で何か問題があったの?」と聞いてみても「別に何もない」と答えるだけでした。

 

そんな息子を無理やり病院に連れていき、診察を受けたところうつ病(単極性うつ病)と診断されました。

 

その後なんとか高校は卒業することができたのですが、第一志望の大学には合格することができず現在の学生浪人に至っています。

 

薬物治療は続けていますが、勉強はまったくせず何に対してもやる気がないようで、ぼーっとしているのは以前とあまり変わりはありません。

 

息子には無事に大学を卒業し、一社会人としてきちんと自立して欲しいと思っているのですが、状況が変わらずずっと悩んでいます。

 

私はこれから息子とどう向かい合っていけば良いのでしょうか?

【相談事例⑤】機能不全家族の環境で育てられうつ病になりました。愛情を感じられない家族と縁を切りたいのですが、私はいったいどうすれば良いのでしょうか?(福岡県20代女性)

機能不全家族の環境で育てられ、うつ病を発症してしまった20代の女性
私は23歳の女性で、半年前にうつ病と診断され現在は無職です。

住まいは実家で、両親と弟(3歳年下)の4人で暮らしています。

 

実は子どもの頃から家族に対して許せない、関わりたくないという気持ちを持っています。

 

その原因は両親の態度で、3つ年下の弟はとても甘やかされて育てられたのに対し、私は両親や弟から常にきつい態度をずっと取られてきました。

 

特に弟が中学生になった頃から柔道を習い始め、そこに反抗期が重なり、両親の手に負えなくなると、家で暴れたり暴力を振るわれたりしないために、弟のご機嫌取りや甘やかしばかりをするようになりました。

 

たとえば私には「勉強しろ」「家事を手伝え」「漫画は禁止」などと言いつつ、弟には好きなことをさせたり漫画を買い与えたりしています。

 

ある時私が一番はじめにお風呂に入ったところ、両親や弟から「長い!どれだけゆっくり入れば気が済むんだ!」「みんなもお風呂に入りたくて待っているのに!」「ここで土下座して全員に謝れ!」などと言われ、3人の前で土下座させられたこともありました。

 

それ以来、私は一番最後に入浴し、お風呂掃除までしてから上がることに決められてしまいました。

 

私は家族に言いたいことがあってもずっと我慢してきました。

でも弟はいつもわがまま言い放題です。

 

父は普段はあまりガミガミ言うことはありませんが、ある程度我慢してからキレて怒鳴ります。

その爆発の矛先は必ず私に向けられ、暴力を受けることもあるのでとても怖いです。

 

母は理不尽な愚痴や文句がとても多く「お前の妊娠中はつわりがとても酷かった」「お前を産んだ時のあの苦しみは忘れない」「弟は良い子だからつわりもなく安産だった」といったことをいつも恨み言のように言われます。

 

また母には「死ね!」と怒鳴られたこともあります。

そんな家庭環境の中で育ってきました。

 

高校を卒業して数年働きましたがその職場でもいじめにあい、うつ病になって会社を辞め現在に至ります。

 

今でも両親や弟から「病院ばかりに行っていないで職安にでも行け!」「うつ病とやらはいつ治るんだ!」「毎日ゴロゴロしていていい加減にしろ!」「働かざる者食うべからずという言葉を知らないのか?」などと言われています。

 

正直言って毎日が地獄のようで本当に辛いです。

できることならこの家族と縁を切りどこか遠くへ逃げ出したいです。

 

私はいったいどうすれば良いのでしょうか?

「うつ病の兆候」を感じたら迷わず専門医に相談することが重要!薬物療法とカウンセリングの併用療法がおすすめ

女性クライアントにうつ病改善のカウンセリングを実施している女性カウンセラー
いかがでしたでしょうか?

実際にカウンセリングを受けたクライアントの、うつ病が原因で悩んでいる相談事例を5つ紹介しました。

 

それぞれに共通して言えることは「うつの症状が出ていても早い段階で対応していない」「複数の専門機関に相談せずに薬物治療だけに頼っている」「うつ病という病気、また治療についての知識がない」ということです。

 

そもそもうつ病には様々な精神症状、身体症状があり、少しでも身体に異常を感じたら早めに病院やクリニック(精神科、心療内科、メンタルクリニックなど)で診察を受ける必要があります。

 

またうつ病は脳の病気なので、治療せずに放置しておくと悪化して治りにくくなったり、その後の社会生活にも大きな悪影響を与えてしまいます。

 

基本的にうつ病と診断された場合、代表的な治療法は「薬物療法」「精神療法」「休養」「環境調整」の4つになります。

 

薬物治療ではうつ症状を改善し再発を予防します。

 

また精神療法(認知行動療法や対人関係両方など)で今までの考え方や性格を少しずつ変えていきます。

 

そして十分な休養を取り心と体を休ませ、さらにこれまで受けたストレスなどを軽減できるように環境調整(職場や学校、家庭など)を進めていきます。

 

今回ご紹介したクライアントの相談事例も、病院できちんとした診断を受け、処方された薬物療法を行い、カウンセラーとのカウンセリング時間を設け、環境を調整していくことによって問題解決に繋がっていきました。

 

ポイントは「自分の症状を素直に受け入れ、決して焦らず治療に専念すること」です。

 

「会社をずっと休むことはできない」「学校をずっと休むことはできない」「家でずっと寝ていることはできない」と考えてしまうケースもあるかも知れません。

 

でもうつ病の症状というのは、「自分に異常が出ているというメッセージ」を伝えてくれているありがたいものなのです。

 

そのありがたいメッセージに寄り添い、自分の心と体を大切にしてください。

 

毎日が楽しくない、充実感がない、気分が落ち込む、やる気がない、眠れない、不安、焦り、イライラ、動悸、めまいなどの症状があった場合、迷わず誰かに相談して下さい。

 

できることなら専門の医師やカウンセラーなどをおすすめしますが、もちろん信頼のできる身近な友人や知人でも構いません。

 

まずはちょっとだけ勇気を出して、自分の今の状況を素直に伝えてみて下さい。

 

その一歩が、以前のような自分らしい生活を取り戻し、生き甲斐や明るい未来への夢や希望に繋がっていきます。

 

この記事があなたの気持ちを少しでも軽くすることができれば幸いです。

 

<うつ病で悩む人におすすめの参考サイト>