アスペルガー症候群で苦しんでいる若い女性
公開日:2022年11月25日/更新日:2023年4月14日
監修:遠藤まなみ(代表カウンセラー)

アスペルガー症候群とは?日常生活における社会性や人間関係におけるコミュニケーションの障害について自覚症状がない状態


アスペルガー症候群とは発達障害(自閉スペクトラム症、ADHD、学習障害、チック症、吃音など)のひとつで、現在では自閉スペクトラム症(DSM-5)に含まれる障害です。

 

社会性や対人関係、および適切なコミュニケーションを取ることが苦手であり、反復的な行動や、興味に対するこだわりが強く、ものごとに柔軟に対応することが難しい状態を指します。

 

またアスペルガー症候群特有の「対人関係の障害やパターン化した興味、こだわりの活動」という自閉症の特徴はありつつも、言語発達や知的発達の部分で遅れがないことから、症状の発見が遅れるケースが非常に多く、周囲を含め自分自身も大人になるまで分からなかったというパターンが多いのも特徴です。

 

日常生活における社会性や人間関係におけるコミュニケーションの障害であることから、周囲から「ちょっと変わった人」と思われるケースが多い反面、並外れた集中力や記憶力、学業成績なども優秀であることが多く、一流の企業に勤めている方も実はアスペルガー症候群だったと診断されることもあるようです。

 

当人にとって最大の悩みは、自分自身がアスペルガー症候群(ちょっと変わった人)という自覚がないため、理由も分からず周囲に敬遠されることにストレスを感じ、うつ状態や精神疾患、強迫性障害につながってしまう場合もあります。

 

 

アスペルガー症候群の原因は?子育ての仕方や躾ではなく「遺伝」「脳の異常」「環境」が深く関係している可能性


アスペルガー症候群のはっきりとした原因は現時点でも解明されてはいませんが、近代の発達障害の調査研究により「遺伝」「脳の異常」「環境」が深く関係している可能性があることが分かっています。

 

これまで言われてきたような「親の子育ての仕方」や「躾(しつけ)」が原因だという説はほぼ否定されています。

 

今の段階で分かっていることは、単純に「これらが原因」という考えではなく、関係している様々な要因が相互に影響しあって脳機能障害として起こるということになります。

 

また最近では、発達が気になる自分の子どもへの早期療育を行う事例も増えています。

 

早い段階で療育を実施することにより、特性自体の治療をすることは難しくても、アスペルガー症候群による二次的な問題(いじめ、不登校、うつ、引きこもりなど)を予防することができると言われています。

 

 

アスペルガー症候群に共通する「10の特徴」とは?セルフチェックで自己分析してみよう!


それでは、アスペルガー症候群に共通する主な10の特徴を紹介します。

自分に当てはまるものがあるかセルフチェックしてみましょう。

  1. その場の空気を読んで、雰囲気に合わせた態度や発言をするのが難しい。
  2. 他人の気持ちや意図を想像、理解するのが苦手と感じる。
  3. いったん興味を持つと過剰と言えるほど熱中し、他のことが目に入らなくなる。
  4. 曖昧な表現や説明を理解することができず聞き返してしまう。
  5. 非言語コミュニケーション(身振り、手振り、視線、表現)がさっぱり分からない。
  6. 決められたマイルールや手順にこだわりがあり、それを破ることを極端に嫌う。
  7. 相手の冗談を判断できず、発言をまともに受け止めてしまう。
  8. 予定外のことや急な変更などがあると頭が混乱しパニックになってしまう。
  9. 他人の話に共感することがなく興味を持つことがない。
  10. 手先を使った細かい動きや、体を上手に動かすことが苦手に感じる。

 

セルフチェックの結果はいかがでしたか?

 

アスペルガー症候群の大きな特徴としては「コミュニケーションと対人関係における障害」と「反復性の行動と興味、同一性のこだわり」の2つになります。

 

またこれらの特徴に当てはまる場合は、下記のような症状が併存するケースがあります。

  • ADHD(注意欠如、多動症、、多動性障害)
  • 精神疾患
  • うつ病
  • 不安障害

 

アスペルガー症候群の悩み、特に対人関係における問題が続くことにより、人との積極的な接触を恐れ、その影響により不登校や引きこもり、大人の場合なら休職、退職を余儀なくされるケースも少なくありません。

 

 

アスペルガー症候群を改善するにはどうすれば良い?改善方法と回復への取り組み方を徹底解説!


アスペルガー症候群を改善するための最も有効な方法は、「子どもの時に適切な治療する」ということです。

 

もしあなたの子どもにアスペルガー症候群の兆候が見られた場合は、

  • 小児神経科
  • 発達小児科
  • 精神科
  • 心理カウンセラー

といった専門機関に相談することが大切になります。

様々な角度からアプローチしていくことで有効な治療が可能になります。

 

さらに「療育(発達支援)」という形で、言葉や身体機能に遅れがある子どもについて、専門的な教育支援プログラムでトレーニングしていくというアプローチも効果的です。

 

ただし、大人になってからアスペルガー症候群の発症した(気が付いた)というケースでは、現在のところ根本的に治療する方法はありません。

 

「大人のアスペルガー」については、基本的に生活への不自由がなくなるような「ソーシャル・スキル・トレーニング」が必要になります。

 

簡単に言えば、「対人関係の悩みや問題を克服するためのコミュニケーションスキル」を身に付け、「人生に対して前向きな考え方」を持てるように精神的自立(自己管理能力)を手に入れることが大切になります。

 

それではアスペルガー症候群の改善についての具体的な取り組み方を紹介します。

 

【アスペルガー症候群の改善方法①】自助グループに参加する


子どものアスペルガー症候群については、早い段階で自助グループに参加してケアしていくことで、二次的な問題(いじめ、不登校、うつ、引きこもりなど)を予防することが可能になります。

 

またアスペルガー症候群の人と関わる(家族、夫婦、恋人など)ことで、心身に影響を及ぼす「カサンドラ症候群」の状態にある人をサポートしている団体もあるので、必要に応じて様々なサポートを受けることができます。

 

【アスペルガー症候群の改善方法②】カウンセリングを受ける


アスペルガー症候群そのものを完治する治療法はありませんが、その特性によって生じる様々な悩みや問題を少しでも軽減させるきっかけとしては、専門のカウンセラーによるカウンセリングが有効的です。

 

カウンセリングやメンタルトレーニングを通じて、アスペルガー症候群により生み出されたものごとの捉え方や考え方、ネガティブな感情、感覚の偏り、強すぎるこだわりといったものを理解することが可能になります。

 

またカウンセラーと共に自分に合った対処法や環境調整などを行っていくことで、今まで持てなかった「新しい考え方」や「ものごとの捉え方」を身に付け、悩みや問題を解決することで「生きやすい自分」を見つけられるようになります。

 

 

【アスペルガー症候群の改善方法③】コミュニケーションを学び身に付ける


アスペルガー症候群の改善について最も有効とされているのが、苦手と感じる対人関係についてのイメージを克服することです。

 

良好な人間関係を築くには、コミュニケーション能力がとても重要です。

 

専門のカウンセラーからトレーンングを受けることで、「他人に対する認知の歪み」を直し、対人関係を上手にしていくためのスキルを身に付けることができます。

 

また専門のカウンセラーとの1対1のやり取りだけでなく、次のステップとして複数のメンバーが参加するコミュニケーションセミナーに参加することも効果的です。

 

参加メンバーとの様々なセッション(言葉や身振り手振りのやり取り)を重ねていくことで、対人関係への苦手意識を少しずつ改善することができます。

 

また自分の気持ちや思いを、相手に上手に伝えることができるようになることで、人間関係の改善だけでなく、毎日が楽しくなり生きる喜びも大きくなっていきます。

 

 

アスペルガー症候群を改善することができた体験者のエピソード


それでは、アスペルガー症候群で悩み苦しんだ経験を元に、今の自分を変えようと行動した体験者の声を3つ紹介します。

 

それぞれのエピソードを読んで、アスペルガー症候群の改善に向けた情報として参考にしてみてください。

 

【体験者のエピソード①】アスペルガー症候群と上手に付き合っていけるよう、ソーシャル・スキル・トレーニングなどにも取り組んでいきいたいと思っています。(東京都在住 30代前半男性)


子どもの頃から友達付き合いが苦手で、本当の友達という存在はいませんでした。

その傾向は学生時代もずっと続き、大学を出て就職してからもずっと人間関係に悩んでいました。

 

ただ仕事自体は普通にできていたので、生きていく上でそれほど問題ではないと思っていました。

ところがその後、仕事で大きなミスをしてしまいました。

 

提携会社とのコミュニケーション不足が原因で数億円という損失を出してしまいました。

そのことがきっかけで私は会社を休職することになりました。

 

コミュニケーションが苦手だということをずっと放置していた私は、休職中になんとか改善できないかと模索していました。

 

当時はアスペルガー症候群の二次障害(うつ)を発症していたので、心療内科に相談し薬物療法を行いました。

 

その後うつの症状が軽減してきたタイミングで、専門の支援センターや自助グループにも相談をして色々とアドバイスを受けました。

 

またアスペルガー関連の本もたくさん読むことで、自分がずっと苦しんできた理由も少しずつ分かってきました。

 

これをきっかけにアスペルガー症候群と上手に付き合っていけるよう、ソーシャル・スキル・トレーニングなどにも取り組んでいきいたいと思っています。

 

【体験者のエピソード②】夫のそんな状況が続くことで私自身にも精神的にうつ病のような症状が出てきてしまい、夫と離婚するという選択肢も考えるようになりました。(神奈川県在住 30代後半女性)


私は30代女性で現在の夫と結婚して2年です。

付き合い初めから1年で結婚したので、夫と知り合ってから3年くらいになります。

 

初めの頃はあまり気にならなかったのですが、だんだんと夫が変だと思うようになっていました。

 

たとえば会話が噛み合わなかったり、一つのことにやたら執着する、場の雰囲気や空気が読めない、またよく分からない理由で突然キレたりなど、ちょっと普通の人ではないなと感じるようになっていきました。

 

夫のそんな状況が続くことで私自身にも精神的にうつ病のような症状が出てきてしまい、夫と離婚するという選択肢も考えるようになりました。

 

でもやはり好きで一緒になった夫なので、なんとかしてあげたいという気持ちが勝りました。

 

ある時、夫の状況を友人に相談したところ、「発達障害のアスペルガー症候群かも知れない」と言われました。

 

私は夫のために改善方法を色々と調べ、アスペルガー症候群専門のカウンセリングを受けるように伝えました。

 

彼自身も自分の異常にずっと悩んでいたようで、一緒にカウンセリングを受けることになりました。

 

アスペルガー症候群の特徴や特性を改めて認識し、これまでと違った考え方や捉え方を学び、日々の生活で困ることがないよう一緒にトレーニングを進めています。

 

夫と共に幸せな家庭を築いていきたいです。

 

【体験者のエピソード③】自分はコミュニケーションが苦手だという自覚はありましたが、アスペルガー症候群ということまでは認識していませんでした。(千葉県在住 20代前半男性)


僕は仕事に就いても長続きできずに悩んでいました。

たとえば事務系の仕事に就いても、分からないことを聞くことができず仕事が進まない。

 

また営業系の仕事についても、身振り手振りや表情などで理解することが苦手なので成績も上がらず、いつも3ヶ月から半年程度で仕事をやめるという負のスパイラルに陥っていました。

 

自分はコミュニケーションが苦手だという自覚はありましたが、アスペルガー症候群ということまでは認識していませんでした。

 

「どうすればアスペルガー症候群でもきちんと仕事をすることができるのか?」そんなことをずっと考えていました。

 

そして「コミュニケーションが苦手ならトレーニングしてみれば良いのかも知れない」と考え、専門のコミュニケーショントレーニングを受けようと決意しました。

 

トレーニングでは人とのやり取りや、感情の伝え方や受け取り方など、対人関係について学びました。

またセミナーにも参加し、参加している人たちとセッションも行いました。

 

最初は人とコミュニケーションを取るのが難しく、セッション自体も正直面白いとは思いませんでした。

 

でも少しずつ意思疎通ができてきた時に、人と話すことが徐々に楽しくなっている自分に気がつきました。

 

仕事が上手く続けられなかったのは、僕自身コミュニケーションができなかったからということを改めて実感しました。

 

今後の仕事に役立てることができるよう、コミュニケーションスキルをしっかりと身につけていきたいと思います。

 

 

【まとめ】アスペルガー症候群を改善できるかどうかはあなた次第!トレーニングすることで対人意識を変えることは可能!


アスペルガー症候群は、「遺伝」「脳の異常」「環境」が深く関係している可能性が高い発達障害です。

 

子どもの段階で発見できれば初期治療的な方法はありますが、言語発達や知的発達といった目に見える状況ではなく、対人関係やコミュニケーションといった目に見えない状況であるため発見するのはとても困難で、そのまま大人になってしまうケースがほとんどだと言われています。

 

ただアスペルガー症候群といっても、自分自身がトレーニングすることである程度改善できるということも分かっています。

 

大切なことはアスペルガー症候群である自分を理解し、認め、そんな自分を尊重し正面から向き合うことです。

 

そして悩みや問題となっている部分を、「自分自身でどのようにして改善していくか?」という部分にフォーカスして積極的に行動することです。

 

自分は自分であり、これからどんな人生を歩んでいくかを選択するのは、紛れもない自分でしかありません。

 

もし今のあなたが対人関係やコミュニケーションで悩みや問題を抱えていたとしたら、ほんの少しだけ勇気を出して、信頼できる誰かに今すぐ相談して下さい。

 

その前向きな考え方と積極的な行動が、あなたの新しい未来に進んでいくことに繋がっていくことでしょう。

 

この記事があなたの気持ちを少しでも楽にして、将来への希望と安心感を与えることができれば幸いです。

 

 

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