公開日:2023年1月9日/更新日:2023年4月15日
監修:遠藤まなみ(代表カウンセラー)
共依存とは?自分と特定の相手が互いに過剰に依存しあい、その関係性に囚われたまま長期的に抜け出せない状態
共依存(Co-dependenc)とはコミュニケーション依存のひとつで、自分自身に焦点があたっていない状態を指します。
簡単に表現すれば、「自分と特定の相手が互いに過剰に依存しあい、その関係性に囚われたまま長期的に抜け出せない状態」になります。
そもそも共依存という言葉は、1970年代のアメリカで生まれた言葉で、アルコール依存症の夫を支える妻が苦しむ状態から名付けられ認知されてきました。
現在では、お互いがお互いに依存してしまう関係性について、共依存という言葉で広く使われるようになりました。
共依存における共通的な考え方として、
- 自分の価値を、狭い世界(恋愛関係、親子関係、援助関係)を基準に判断する。
- 自分の意思や希望ではなく、周囲の意見や期待に応えることだけを考える。
- 自分が必要とされている相手には、たとえ苦しくても常に一生懸命になる。
といったものが挙げられます。
お互いがそれぞれ相手に依存するあまり、自分自身を見失っている状態が多く見られます。
しかし相手に対して、
- 役に立ちたい。
- 好かれたい。
- 自分を認めて欲しい。
という気持ちが強すぎることで、自分自身がどんどん苦しくなり、一生懸命にやればやるほど状況が悪化していきます。
その結果、相手との関係性は悪化し、精神的苦痛や疲労、無気力感、自己否定感などを引き起こす場合もあります。
共依存の原因は?心理的に不安定な状態の中で、自己否定感や相手に見捨てられてしまう不安といったネガティブな感情
共依存になってしまう最大の原因は、「自己評価が低い」という部分にあります。
そして自己評価が低くなってしまう背景として、そもそも今の自分が置かれている立場や環境が大きく影響しています。
何らかの問題を抱え、心理的に不安定な状態の中で、自己否定感や相手に見捨てられてしまう不安といったネガティブな感情が、自分を取り巻く周囲の人間関係や行動に大きな影響を与えています。
以下、共依存関係に陥りやすいケースを具体的に紹介します。
【共依存関係の原因①】恋愛関係
恋愛における共依存は、一方が一生懸命に相手の世話をして、もう一方は相手の世話に甘えているという状態です。
分りやすく例えるなら、「アルコール依存症の彼とそれを支える彼女」というイメージです。
相手のためを思い色々と世話を焼く、そして尽くすことは、傍から見れば良いように見えますが、過度な世話は相手の自立を妨げていく大きな原因になります。
また世話をする側は、相手がどんどん駄目になっていく様子を見て自分の存在価値(嬉しい)を認識します。
それにより、お互いが離れられない状況のまま駄目になっていくという負のループを作り出します。
【共依存関係の原因②】親子関係
親子における共依存は、親が子どもの行動を支配的に制御し、子ども自身の自立を妨げてしまうという状態です。
もちろん親が子どもの将来を考え世話するのは当然のことで、「世話好き=共依存」ということではありません。
問題となってくるのは、
- 子どもに対して、親がいないと何もできない(親離れできない)と思わせる。
- 親に対して、かわいい子どもがいないと困る(子離れできない)と思わせる。
というものです。
また家庭内暴力、夫婦仲が悪い、家庭に居場所がないといった精神的影響を受けるような環境でも、それが日常的に慣れてしまうことで耐性ができてしまいます。
その結果、一般的に考えてもあり得ない状況、また周囲の人から異常に見えるような状態であっても、お互い普通に(何の問題もないかのごとく)暮らしていけるようになってしまいます。
【共依存関係の原因③】援助関係
援助における共依存は、援助する側(医療職、介護職など)の存在意義が強くなり過ぎることで、相手の自立を逆に阻害してしまうという状態です。
もちろん援助職は人を支援することが仕事なので、相手に頼られてしまうと一生懸命になるのは自然なことです。
ただし同時に相手の回復や自立のお手伝いも必要になってきます。
その狭間で自分自身が抱える空虚を埋めるために、「人から必要とされている自分」であり続けなくてはならないという考えが過度に強くなります。
その結果、人のためにやっていることが過剰になり、援助される側の行動をコントロールしてしまうという状況に陥ります。
そして援助される側の回復が遅れたり、もともとできるはずのことができなくなってしまった、という状態を招いてしまうケースもあります。
共依存に共通する「10の特徴」とは?セルフチェックで自己分析してみよう!
それでは、共依存に共通する主な10の特徴を紹介します。
自分に当てはまるものがあるかセルフチェックしてみましょう。
- 自己肯定感が低く、自分には価値がないと思っている。
- 他人から頼られる、評価されることが自分の価値だと思っている。
- 世話を焼くのが好きで「お節介」と言われたことがある。
- 必要以上に尽くして、相手を支配したいと思っている。
- 人とのコミュニケーションが苦手で自分の意見が言えない。
- なんとなく相手のペースに合わせてしまうことが多い。
- 誰かがいれば問題ないが、ひとりで行動することができない。
- もともと何かに集中したり依存したりするのが好き。
- 恋人や友達に見捨てられることに計り知れない恐怖を覚える。
- 自分の欲求を我慢したり、本心ではないことを言ってしまうことがある。
セルフチェックの結果はいかがでしたか?
共依存の大きな特徴としては「自己肯定感の低さ」にあります。
心の問題は様々な形で現れますが、基本的な思考としては、「自分には価値がない」と感じていて、人から頼られたり評価されたりすることが「自分が生きている価値」だと考えています。
また常に不安や恐怖を抱えているため人に依存しやすく、ひとりで行動することができないなど、人間関係や社会生活において生き苦しさを感じるようになります。
共依存を卒業するにはどうすれば良い?改善方法と回復への取り組み方を徹底解説!
共依存の関係は難しそうなイメージがありますが、実はとてもシンプルな構造です。
人間関係における共依存の仕組みは、
- 依存する側 → 誰かに頼らないと生きていけない(心配させる、困らせるなど)。
- 依存される側 → 世話を焼いてあげずにいられない(助ける、支える、尽くすなど)。
というものです。
また共依存と言っても、「お互いが心地の良い関係」もあれば「お互いが心地悪く苦しい関係」もあります。
心地悪く苦しい関係であれば自分の判断で速やかに離れれば良いだけの話ですが、お互いが共依存関係に陥った状態では苦しみながらも離れることができません。
さらに共依存は自己認識の概念が背景にあるため、医療的な治療をする対象ではありません。
改善のためのアプローチとしては、
- 物事に対して100%自分の考えで決断(自分で選択、意思決定)していく。
- 他人の考えや評価ではなく、自分がどうあるべきか(自己主張)を最優先する。
- 自己肯定感を高め、自分自身のひとり時間やひとり行動を大切にする。
- コミュニケーション能力を高め、自分自身が精神的に自立できるメンタルを養う。
の4つのプロセスが大切になります。
簡単に言えば「自分の意思を持って精神的に自立して、他人に依存しない考え方や生き方を手に入れる」というものです。
ただし、これらの取り組みを自分だけで実践していくのはとても難しいと思われます。
もちろん自分一人でゆっくりと進めていくという方法もありますが、苦しい状況をすぐにでも抜け出すには、周囲の協力を得た上での取り組みを実践していく方がとても効果的です。
それでは共依存の改善についての具体的な取り組み方を3つ紹介します。
【共依存の改善方法①】自助グループに参加する
恋愛関係、親子関係、援助関係など、機能的な人間関係を維持することができない問題を抱えている人のための自助グループに参加してみましょう。
共依存を克服し、本来の自分というものを回復させるためのプログラムを実践して、他人を振り回さない、そして他人に振り回されない生き方を手に入れるきっかけを作ることが可能です。
【共依存の改善方法②】カウンセリングを受ける
心の専門家である、臨床心理士や心理カウンセラーに相談して、心理療法やメンタルサポートを受けてみましょう。
共依存という問題は、恋愛、親子、援助の他、夫婦、職場、ペットなど一人ひとり状況が違い抱える悩みも様々です。
共依存の克服には、当人とは違った視点、思考、視野の広さを持った第三者的な外部との繋がりを作ることが効果的です。
継続的にカウンセリングを受け、専門的な心理療法(認知行動療法など)を行っていくことにより、認知の歪みを改善し共依存に関係する「根深い自尊心の問題」を改善していくことが可能です。
またメンタルトレーニングを並行して進めていくことで、「精神面の強化」や「安定したメンタル」を手に入れることが可能になります。
【共依存の改善方法③】自分に合った書籍を読んで改善する
共依存の関係になっていると感じても、他人にすべてを打ち明け相談することはなかなか難しいものです。
また、どうしても自助グループに参加する気になれない、臨床心理士や心理カウンセラーに相談する気持ちになれないという場合もあるでしょう。
そういう時は、まずは手軽に情報を入手することができる共依存関連の書籍を参考にするのがおすすめです。
自分に合った書籍を見つけることで、共依存を改善するために必要なことや、足りない部分を発見することが可能になります。
まずは一歩前進して、書籍から今の自分の状況を克服するヒントを掴みましょう。
共依存を改善することができた体験者のエピソード
それでは、共依存で悩み苦しんだ経験を元に、今の自分を変えようと行動した体験者の声を3つ紹介します。
それぞれのエピソードを読んで、共依存の改善に向けた情報として参考にしてみてください。
【体験者のエピソード①】彼の家から出ていくよう強制退去を宣言されましたが、自分にとって本当に必要なものを見つけ出すことができました。(東京都在住 20代後半女性)
同棲中の彼(30代後半)と大喧嘩し、彼の家から出ていくよう強制退去を宣言されました。
喧嘩の原因は彼の浮気ですが、その証拠を見つけるために彼の着信履歴を見てしまったことが発端です。
彼は勝手にスマホを見た私に暴力を振るってきました。
以前から彼には暴力的な部分がありましたが、今回はいつもより過激な暴力行為でした。
そんな彼には正直うんざりして、今すぐにでも分かれるべきだと頭では理解しているのですが、彼に謝り続け許してもらえることを期待している(彼から離れられない)自分も存在していました。
そんな時、幼い頃からの友人から恋愛依存系の自助グループへの参加をすすめられました。
友人も一緒に参加してくれたおかげで、安心してグループでのディスカッションができました。
自分が経験したこと、苦しかったこと、悲しかったことをすべて話すことで、その原因や自分にとって本当に必要なものを見つけ出すことができました。
今ではその彼ともお別れし、自分に自信が持てるようにもなりました。
【体験者のエピソード②】私は母親との関係でずっと悩んでいました。でも自分自身の考え方を変えることで周りの人も変わるものだと実感しました。(神奈川県在住 30代前半女性)
私は母親との関係でずっと悩んでいました。
20歳を過ぎてからずっと一人暮らしをしたいと思っていたのですが、母親の束縛が強く自立することができません。
もちろん母親とは仲が良いのですが、機嫌が悪くなるとものすごい勢いで怒鳴られます。
それがとても嫌で母の機嫌を取り続けて生きてきました。
このまま一生母と離れることができない、一人暮らしはできないと悩んでいました。
そんな時、共依存という言葉を知りました。
なんとしてもこの状況から抜け出したくて、母親には内緒で心理カウンセラーに相談してみました。
はじめは心が苦しくてあまり話せませんでしたが、そんな私の話をしっかりと聞き適切なアドバイスをしてくれました。
何度かカウンセリングを受けた後、母親に自分の考えや強い意志を伝える機会を作りました。
母は少しびっくりしていましたが、私の覚悟をしっかりと受け止めてくれて、自立(一人暮らし)を認めてくれました。
物心がついてからずっと苦しんでいましたが、自分自身の考え方を変えることで周りの人も変わるものだと実感しました。
【体験者のエピソード③】共依存関係を予防するには、目的と手段を間違えない、均一なサービスの提供、そして適切な距離と保つということ。(岡山県在住 30代後半女性)
私は子どもの頃から、自分のことより人のことを優先する性格でした。
人の世話を焼くことにエネルギーを費やし、人から必要とされていることに自分の存在価値を感じていました。
そんな性格もあって、ホームヘルパーの仕事に従事していましたが、ある時から介護スタッフである私と要介護者の間に「強い共依存関係」を感じるようになりました。
はじめの頃は自分でできること(食事、入浴、着替え、排泄など)はしてくれていたのですが、徐々にサポートの割合が増えていきました。
私としては「頼られている」というやりがいで一生懸命サポートしていましたが、徐々に心が追い詰められてくる感覚を覚え、深い疲労感やネガティイブな感情が出てくるようになりました。
そんな時に同じチームの先輩ヘルパーさんが、「私も救われた本だから良かったら読んでみて」と共依存に関する本をプレゼントしてくれました。
その本を読むことで、要介護者との共依存関係になっていることが分かりました。
私の性格によって苦しい現状を作り出していたのです。
共依存関係を予防するには、目的と手段を間違えない、均一なサービスを提供すること、そして要介護者との適切な距離と保つということを学びました。
【まとめ】共依存関係を抜け出すという強い意思が重要!サポートネットワークをフルに活用して精神的に自立した自分を手に入れる!
共依存は、自己肯定感の低さが招くコミュニケーション依存のひとつです。
共依存になってしまうきっかけは、その人自身の考え方や捉え方の問題ですが、そもそもの始まりは子供の頃の環境が大きく関係していると言われています。
たとえば、
- 子どもの成長期に生存のための環境が十分でなく常に不安を感じていた。
- 家族や親族の中に、何らかの心理的な問題を抱えていた人がいた。
- 子ども時代に養育者(親、育ててくれた人)から無条件の愛を得られなかった。
- 強い人間が家族を支配し、家族の一人ひとりが尊重されず、自由な意思や意見が言えなかった。
- 家族という小さな社会が健全でない環境(暴言、暴力、反社会的、機能不全家族)であった。
このような環境は一般的に見ても正常なものではありません。
ところがその環境が日々続くことで慣れてしまい、それが普通と感じるようになり、結果として共依存の原因となるネガティブな思考を形成してしまうのです。
人は「生まれた時も1人」で「死ぬ時も1人」です。
ひとつの命としてこの世に生まれ、運命的に出会う人や関わる人々と協力しあいながら人生を歩んでいくことはとても素晴らしいことです。
しかし、
- 「誰かに頼らないと生きていけない」
- 「世話を焼いてあげずにいられない」
というのは、人としての本来の生き方から少しだけ逸脱(いつだつ)しているのではないでしょうか?
なぜなら、結局はお互いがお互いを駄目にするという結果(悲劇)しか生み出していないからです。
共依存を克服するのなら、自分自身がきちんと自立して生きていくという覚悟を持つことが大切です。
もし今のあなたが特定の誰かと共依存関係にあり、それが原因で苦しんでいるとしたら、ほんの少しだけ勇気を出して信頼できる人に今すぐ相談してください。
その第一歩が、あなたの未来を楽しくて幸せな方向に導いてくれるでしょう。
あなたの大切な人生は、もっと嬉しくて楽しくて幸せなものです。
今回ご紹介した共依存についての記事が、あなたの心を楽にして、未来への希望と安心感を与えることができれば幸いです。
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