公開日:2022年11月11日/更新日:2025年1月29日
監修:遠藤まなみ(代表カウンセラー)
インナーチャイルドとは?「子ども時代に経験したトラウマ」で大人としての考え方ができずに生きている状態
インナーチャイルド(Inner child、略してIC)とは、子ども時代の家庭環境でトラウマになった負の感情(ネガティブ癖)で、当時の考え方や思考パターン、習慣を変えられない状態が大人になっても変わっていない状態を指します。
またインナーチャイルドを直訳すると「内なる子ども」で、その症状が強く出てしまうと、大人としての捉え方や考え方を持つことができなくなります。
その結果、日常生活や社会生活、そして人間関係を築いていくことが難しいと感じ、日々生きづらさを感じてしまうようになります。
簡単に表現すれば「子ども時代に経験したトラウマを引きずり、年齢を重ねても大人としての成熟な考え方ができずに生きている状態」になります。
そもそもインナーチャイルドの概念は、アメリカのセラピストである、ジョン・ブラッドショー氏が1993年に出版した「インナーチャイルド 本当のあなたを取り戻す方法」で提唱したのがはじめだと言われています。
またインナーチャイルドとアダルトチルドレンは、どちらも「チャイルド」という言葉がついていることから同じような意味に捉えがちですが、具体的には、
- インナーチャイルド:幼少期のトラウマによって心に抱えてしまう「負の感情(ネガティブ癖)」のこと。
- アダルトチルドレン:「負の感情(ネガティブ癖)」により本来の自分を出せず生きづらさを感じてしまうこと。
という違いがあります。
この2つは密接に関係していて、インナーチャイルドを癒やし改善することで、アダルトチルドレンの症状を緩和させる可能性があります。
原因は?その原因のほとんどは親が子どもに与える3つのネグレクト
インナーチャイルドは、幼少期に起こる身体的または精神的な暴力を受ける、また家族関係に何かしらの問題を抱えトラウマになってしまう「幼少期の辛い体験」が大きな原因となっています。
インナーチャイルドの原因となる親の発言や行動を具体的に紹介します。
- 子どもに自分の意見を一切言わせない。
- 遊ぶ、楽しむ、喜ぶ、笑うことなどに否定的。
- 支配的かつ奴隷のように扱い、感情を出させない。
- 発言に対し異常に厳しく、時には罰を与える。
- 土下座を強要するなど絶え間ない恥辱を行う。
- 子どもの自発性を認めず、絶対に許さない。
- 子どもに何か問題が起きてもサポートせずに放置。
- ハグ、キス、抱擁などの身体的な愛情をまったく与えない。
またインナーチャイルドの原因となるトラウマには、感情的、心理的、身体的ネグレクトの3つのタイプがあり、これらが大人になってからのインナーチャイルドに障害を引き起こします。
これらが示すように、親から精神的および身体的なサポートを受けていない子どもはトラウマを抱え、安心感を破壊し、心の中に過度の警戒と恐怖を引き起こします。
つまり生きながらにして感情的、心理的、精神的な安全を感じることができないのです。
そして大人になっても、これらのインナーチャイルドは消えることはなく、精神的に危害、恐怖、欠乏から安全と感じることができない状態となり、多くの大人が無意識のうちに生きづらさを感じるようになります。
インナーチャイルドに共通する「10の特徴」とは?セルフチェックで自己分析してみよう!
それでは、インナーチャイルドに共通する主な10の特徴を紹介します。
自分に当てはまるものがあるかセルフチェックしてみましょう。
- 自分の存在が不適切である、また価値がないと思っている。
- 心の奥底で、自分は何か間違っているといつも感じている。
- 何か新しいことをしようと考えるとき、いつも不安を感じる。
- 対人恐怖症で人が怖いと感じる、人と関わるのや会話するのが苦手。
- 何か物事を始めたり終わらせたりするのが苦手で苦痛を感じる。
- 悲しみや怒りなどの強い感情を表に出すのが恥ずかしい。
- 人間関係は苦手だが、他人を強引に従わせたいという支配欲が強い。
- ポルノに依存していて、ポルノを見ることに多くの時間を費やしている。
- 母や父に親しみを感じたことはなく、自分以外の人には不信感を抱いている。
- 自分は頑固で完璧主義、自分も他人も許せない。
セルフチェックの結果はいかがでしたか?
インナーチャイルドの大きな特徴としては「自己否定の強さ」にあります。
精神的な心の問題は様々な形で現れますが、基本的な思考としては、子どもの頃に受けたトラウマになるような経験を踏まえて、
- 自分の感情を抑え込む。
- 自分の欲求を表現しない。
という考え方になり、不安と恐怖から自分の殻に閉じこもってしまう状態になります。
その結果、大人になってからの自分の思考や行動、感情、人間関係に支障をきたし、日常の生活において違和感や生きづらさを感じるようになります。
克服するにはどうすれば良い?改善方法と回復への取り組み方を徹底解説!
インナーチャイルドを克服するには、自分自身の心を癒やす必要があります。
それにより今の自分を認めることができるようになり、辛いと感じることなく自分らしい生き方ができるようになります。
インナーチャイルドを克服するには、はじめに「自分の中にあるインナーチャイルド」を見つける必要があります。
具体的なアプローチとしては、
- 過去の写真や想い出、または家族から昔の話を聞いて「当時の問題や感情など」をノートに書き出す。
- 当時(幼少期)に経験した「辛い出来事や嫌だった感情」に直接触れ、過去と現在を切り離して事実と向き合う。
- 過去を振り返り、どのような状況でも、親や大人が「子どもの頃の自分を傷つけた事実」を明確に否定する。
- 親や大人から受けた間違いを明確にして、「過去に感じた怒りの感情(負の感情)」をすべて吐き出す
この4つのプロセスが大切になります。
簡単に言えば「過去に受けた辛い経験を把握し、明確に否定し、抱えていた怒りの感情をすべて開放する」というものです。
ただこのような状態にある場合は、自分のインナーチャイルドを癒やす作業はとても大変です。
もちろん自分一人でできる場合もありますが、一人で向き合おうとすることでかえって辛い感情が増えてしまうケースもあります。
できることなら周囲の協力を得るような形で進めていくことがとても効果的です。
それではインナーチャイルドの克服についての具体的な取り組み方を紹介します。
①カウンセリングを受ける
インナーチャイルドは、幼少期のトラウマによる負の感情(ネガティブ癖)です。
人間関係や社会生活での生きづらさを感じ、それが原因でうつ病を発症するケースもあります。
「自分はインナーチャイルドかも知れない」と感じたら、早めに臨床心理士や心理カウンセラーに相談してみましょう。
継続的なカウンセリングや認知行動療法によってインナーチャイルドを癒やし、それらの原因となっているトラウマを克服できるようになります。
さらに未来に向けての新しい考え方や捉え方を身に付け「生きやすい自分」を見つけられるようになります。
②書籍を読んで自分自身で克服する
「自分はインナーチャイルドかも知れない」と感じても、なかなか人に相談することが難しいというケースもあります。
また、積極的に自助グループや専門家に問い合わせをするという気持になれない場合もあると思われます。
そういった場合は、まず手軽に読める書籍を参考にするのがオススメです。
インナーチャイルドや認知行動療法についての書籍を選び改善のヒントを掴んでいきましょう。
インナーチャイルドを改善することができた体験者のエピソード
それでは、インナーチャイルドで悩み苦しんだ経験を元に、今の自分を変えようと行動した体験者の声を3つ紹介します。
それぞれのエピソードを読んで、インナーチャイルドの改善に向けた情報として参考にしてみてください。
①夫に協力してもらいながら約1年半、抑えられない感情や生きづらさは徐々に小さくなり、当たり前だった夫婦喧嘩もなくなりました。(大阪府在住 30代後半女性)
私が小学生の頃の話ですが、両親が離婚し母親が家から出ていきました。
母は情緒不安定なのかヒステリックなのかスイッチが入ると急に怒り出す人でした。
私自身、物心ついた頃から母親の顔色をうかがい母親を怒らせないよう気を使っていました。
また同時に母親には褒めてもらいたいという気持ちがありました。
現在は結婚して、夫と3歳の子どもの3人で暮らしています。
夫とは結婚当時から喧嘩が絶えませんでした。
原因は夫の考え方や行動に対する感情(怒り、許せない、執着など)と自分自身の孤独感です。
夫の考え方や行動は、冷静になってみると決して悪いことをしているわけではありません。
でも私的にはどうしても嫌な気持ちになり結果として口論や喧嘩になってしまいます。
このままではいけないと思い、ネットなどで色々と調べてみると、私にはインナーチャイルドが関係していると思えてきました。
幼少の頃の母親に対する気持ちと、夫に対する気持ちに共通点(自分だけ見て欲しい、褒めて欲しいなど)があることに気づき、それが思い通りにならない感情が怒りとなっているのでは?と考えるようになりました。
私はインナーチャイルドのことについて夫に打ち明け、克服できるよう一緒に協力して欲しいと伝えました。
それからは夫と二人三脚で、インナーチャイルドについての情報(ネット、本など)を元に、深層心理を客観的に理解していく取り組みを実践していきました。
夫に協力してもらいながら約1年半、抑えられない感情や生きづらさは徐々に小さくなり、当たり前だった夫婦喧嘩もなくなりました。
これからも自分に合ったメンタルケアを怠らず、家族3人で楽しく暮らしていけるように心がけていきたいです。
②劣等感、自己否定、対人恐怖など、今の自分の生きづらさの原因となっている考え方や捉え方を根本から改善していく必要があると感じました。(埼玉県在住 40代前半男性)
自分の過去の出来事を思い出すと、両親は険悪でいつも暴言や暴力が行われていました。
また経済的にも貧しく、父親はギャンブル依存症であまり仕事もせずお酒ばかり飲んでいました。
小中高校では友達もできず、いじめられた経験や家庭の貧しさから強い劣等感を抱いていました。
自分に無力感を感じ、こうなってしまったのは両親や環境のせいだとずっと恨んでいました。
仕事もうまくいかずもちろん人間関係もギクシャクしていました。
そんなある時、自分の仕事(出版関係)の関係でインナーチャイルドを取り扱うことがありました。
インナーチャイルドについて調べていくうちに、「これはまさに自分のことではないか?」と思えるくらい思い当たることがたくさんありました。
劣等感、自己否定、対人恐怖など、今の自分の生きづらさの原因となっている考え方や捉え方を根本から改善していく必要があると感じました。
そこで私は専門のカウンセリングルームにインナーチャイルドについての相談をしてみました。
まず交流分析によって思考や感情、性格の傾向を分析してもらい、その後は今の自分の状況把握、認知の歪み、必要な心理療法など詳しく説明してもらいました。
最初の交流分析と週に一度のカウンセリングですが、インナーチャイルドとの向き合い方が分かってきたような気がします。
本当の自分を取り戻し、人間関係も良好にできる人生にしていきたいと思っています。
③子供の頃の影響なのか、他人の目が怖い、1人で行動できない、言葉がやや攻撃的といったような性格が根底にありました。(北海道在住 30代前半女性)
私には2歳年上の姉がいるのですが、子どもの頃から愛嬌があって明るくよく話す子でした。
逆に私は物静かで学校のことや友達のこともあまり話さない子でした。
そんなこともあり、母親からは「お姉ちゃんは良い子」「あなたは言う事を聞かない子」というレッテルを貼られていました。
当時は姉ばかり可愛がる両親を見ていて、毎日とても辛かったのを覚えています。
今では両親の元を離れ自立して生活をしていますが、子供の頃の影響なのか、他人の目が怖い、1人で行動できない、言葉がやや攻撃的といたような性格が根底にありました。
また何事においても、白か黒か?0か100か?みたいな極端な考え方も持っていました。
もちろん自分も嫌いだし、生きているのが辛く面白くない日々を過ごしていました。
そんなある時、友人から「あなたインナーチャイルドじゃないの?」とストレートに言われました。
インナーチャイルドの意味さえ分からない状態でしたが、ネットなどで調べてみると、子供時代の環境や今の性格、考え方はインナーチャイルドが原因なのかも知れないと思い、専門のカウンセラーさんに相談してみようと思いました。
何か所か相談して、現在では週に一回ほど自分に合った心理療法(近所ではないので電話カウンセリング)を受けています。
おかげで少しずつ心は軽くなってきましたが、自分を苦しめていたのは自分自身だったということにも気が付きました。
当時はうつ病かも?と思っていましたが、その根本にある原因は私の心の中にあるインナーチャイルドでした。
過去のトラウマを癒やし、前向きに生きていけるよう頑張っていきたいと思います。
【まとめ】本当の意味で自分を愛することができるのは自分しかいない!今すぐ信頼できる誰かに相談することが重要!
インナーチャイルドは、幼少期に起こる身体的または精神的な暴力を受ける、また家族関係に何かしらの問題を抱えトラウマになってしまうことによって生み出されるものです。
そしてインナーチャイルドというものは、どのような症状があると言っても、結局は「自分自身の捉え方」でしかありません。
そんな自分自身を嫌いになったり否定したり、許せない存在として考えても状況が改善することはありません。
大切なことは、インナーチャイルドである自分と真摯に向き合い、深層心理を客観的に理解していくことです。
そして正しいメンタルケアを学び、ストレスの原因となるものを予防し、自分自身が精神的に一回りも二回りも強くなることが必要です。
自分を心から大切にし、本当の意味で自分を愛することができるのは自分しかいないのです。
もし今のあなたが、人間関係や社会生活の中で違和感を感じていたり、日々の生活がなんとなく辛い苦しいと感じていたとしたら、ほんの少しだけ勇気を出して、今すぐ信頼できる誰かに相談して下さい。
その勇気ある行動が、あなたの新しい生き方を見つけることに繋がっていくことでしょう。
この記事があなたの気持ちを少しでも軽くし、安心感を与えることができれば幸いです。
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