公開日:2022年10月11日/更新日:2023年5月16日
監修:遠藤まなみ(代表カウンセラー)
アダルトチルドレンとは?「子供の頃に受けたつらい経験」を引きずりながら生きている状態
アダルトチルドレン(Adult Children、略してAC)とは、子供の頃に家庭内(機能不全家族)で起こる親との関係で、何かしらのトラウマ(心的外傷)によって傷つき、その状態で成人した人を指します。
アダルトチルドレンを「大人になりきれない大人」と認識しているケースもありますが、それは間違った解釈です。
簡単に表現すれば、「子供の頃に受けた家庭でのつらい経験を引きずり、日常生活に支障をきたしながら生きている状態」になります。
そもそもアダルトチルドレンの概念は、1970年代のアメリカで提唱され始め、アルコール依存症の親を持つ子どもたちが大人になった時、対人関係における様々な問題や、精神的に生きづらい悩みに苦しんでいる人が多くいる実態から認知されてきた歴史があります。
またアダルトチルドレンは医学的な病名や診断名ではなく、人としての生きづらさにフォーカスする中で生まれた言葉です。
アダルトチルドレンの原因は?その原因のほとんどは親が与える精神的な影響
アダルトチルドレンは、親との関係でトラウマになるような「精神的に傷つく体験」が大きな原因となっています。
以下、4つの原因を具体的に紹介します。
【アダルトチルドレンの原因①】虐待が日常化している親のもとで育つ
身体的虐待、心理的虐待、性的虐待、家族内の対立や不仲、またDV(家庭内暴力)や性行為を見せつけるなど、虐待が日常化している親のもとで育つ。
【アダルトチルドレンの原因②】依存症(嗜癖障害)をもつ親のもとで育つ
アルコール依存症、薬物依存症、セックス依存症、ギャンブル依存症、仕事中毒(ワーカホリック)などの依存症(嗜癖障害)をもつ親のもとで育つ。
【アダルトチルドレンの原因③】機能不全家族の親のもとで育つ
家庭内で弱い立場の人(子供や高齢者)に対し、身体的または精神的ダメージを与える、また様々なネグレクト(保護者責務放棄)行為をする親のもとで育つ。
【アダルトチルドレンの原因④】毒親(毒になる親)
子供に必要以上に関わる、完璧主義で子供の自由や幸せを奪う、子供のためと言って厳しい態度で接し精神的に追い詰める、といったような毒親(毒になる親)のもとで育つ。
子供は生まれた時から様々な特性を持っています。
たとえばいつも泣く赤ちゃんや、なかなかグズらない赤ちゃん、また注意や集中力に欠けている、ものごとに敏感だったり衝動的だったり、さらに理解力が低いなどとても個性豊かです。
ところが、これらの特性がアダルトチルドレンの直接の原因となることはまずありません。
実は、アダルトチルドレンの原因のほとんどが「親による影響」だと考えられています。
アダルトチルドレンを生み出してしまうような家庭は、子供にとって決して安全な場所ではなく、生きた心地ができないような環境であるケースが多いようです。
それでも子供は「その環境で生き抜くため」に無意識に様々な策を講じた対応をします。
時には目の前で起きているあまりにもつらい体験を認めたくないために、無意識のうちにその経験を記憶しようとしなかったり、自分自身が傷ついたことさえ認識しないようにします。
そういった経験がアダルトチルドレンを生み出し、その後の人生における人間関係や社会生活に大きな悪影響を及ぼしてしまうのです。
アダルトチルドレンに共通する「10の特徴」とは?セルフチェックで自己分析してみよう!
それでは、アダルトチルドレンに共通する主な10の特徴を紹介します。
自分に当てはまるものがあるかセルフチェックしてみましょう。
- 自分自身が孤立し、他人や目上の人を恐れるようになる。
- 承認欲求が生まれアイデンティティ(自我同一性)を失う。
- 他人の批判や怒りに怯え敏感になる。
- 自分に批判的になり別の人格を求めるようになる。
- 被害者視点で人生を生きるようになる。
- 自分のことを顧みず、他人に関心を持つようになる。
- 自分でコントロールできない変化に過剰に反応する。
- まじめに考えすぎて何事も楽しむことができない。
- 自分は他人とは違う生き物だといつも感じている。
- 他人と親密な関係を持つことができない。
セルフチェックの結果はいかがでしたか?
アダルトチルドレンの大きな特徴としては「自己肯定感の低さ」にあります。
心の問題は様々な形で現れますが、基本的な思考としては、自分自身に対しての自己評価がとても低く、自分の存在に価値を感じず、他人に自分の真価を知られることをとても恐れています。
そして自分の思考や行動、感情、人間関係に支障をきたしたり、社会生活において違和感や生きづらさを感じるようになります。
アダルトチルドレンを卒業するにはどうすれば良い?改善方法と回復への取り組み方を徹底解説!
アダルトチルドレンは自己認識の概念が背景にあるため、医療的な治療をする対象ではありません。
改善のためのアプローチとしては、
- 過去の事実を認め、その時の自分の感情を言葉に出して話す。
- 過去のどんな経験が今の自分にどう影響しているのかを探り出す。
- 自分の中にある認知の歪み(ものの考え方、捉え方)を導き出す。
- 認知の歪みを改善し、新しいものの考え方やものの捉え方に修正する。
の4つのプロセスが大切になります。
簡単に言えば、「過去の体験を事実としてしっかりと見つめ直し、生きづらさの原因となっていた過去の考え方を修正していく」というものです。
ただこれらの取り組みを、自分ひとりで行うのは非常に困難です。
もちろん自分ひとりで頑張るという方法もありますが、できることなら周囲の協力を得た上での取り組みを実施する方がとても効果的です。
それではアダルトチルドレンの改善についての具体的な取り組み方を3つ紹介します。
【アダルトチルドレンの改善方法①】自助グループに参加する
子供の頃に虐待、依存症、機能不全家族、毒親のもとで育った成人のための自助グループに参加しましょう。
全国各地にある自助グループもあり、同じような心の悩みや問題、生きづらさを抱えている人たちが自律的に活動し、それぞれの問題解決やアダルトチルドレンの克服を目指しています。
【アダルトチルドレンの改善方法②】カウンセリングを受ける
臨床心理士や心理カウンセラーに相談して、心理療法やメンタルケアを受けてみましょう。
もちろん自分が「アダルトチルドレンかも知れない」と悩んでいる場合でも相談してみましょう。
継続的なカウンセリングや認知行動療法によってアダルトチルドレン特有の認知の歪みを改善し、新しいものの考え方や捉え方を身に付けることができるようになります。
合わせてメンタルトレーニングも並行に実施することで、精神的にも安定した自分自身を手に入れることが可能になります。
【アダルトチルドレンの改善方法③】本を読んで自分で改善する
「自分はアダルトチルドレンかも知れない」と感じても、なかなか人に相談することができません。
また、どうしても自助グループやカウンセリングに問い合わせをするという気持ちになれない場合は、手軽に読める書籍を参考にするのがオススメです。
アダルトチルドレンや認知行動療法についての書籍を選び改善のヒントを掴みましょう。
アダルトチルドレンを改善することができた体験者のエピソード
それでは、アダルトチルドレンで悩み苦しんだ経験を元に、今の自分を変えようと行動した体験者の声を3つ紹介します。
それぞれのエピソードを読んで、アダルトチルドレンの改善に向けた情報として参考にしてみてください。
【体験者のエピソード①】自分を客観的に見つめ、極端な考え方をせず、「自分はこれでいいんだ」と常に言い聞かせて行動するようにしています。(神奈川県在住 30代後半女性)
私は30代前半の頃うつ病になりました。
当時働いていた会社で店長の仕事を任され、休日も取れないくらい忙しい毎日の中で6ヶ月ほどやっていたのですが、ある時自分でも信じられないくらいに精神的な異常を感じ、心療内科でうつ病と診断されました。
薬物治療を続けながら「どうしてうつ病になったのか?」をひたすら調べていたところ「アダルトチルドレン」という言葉を知りました。
私は仕事だけでなく、何でも頑張りすぎてしまう、考えすぎてしまう、我慢してしまうという極端な考え方(クセ)があることに気が付きました。
それがまさしくアダルトチルドレンの最大の特徴で、うつ病の原因になっていることが分かりました。
そこで私は薬物治療を続けながら、アダルトチルドレン関連の本をたくさん読むことに没頭しました。
なんとしても自分の中にあるアダルトチルドレンを克服したかったらかです。
自分自身を客観的に見るために、会社の同僚に自分の性格(クセ)を聞いてみたり、自分の歪んだ考え方(自信がない、完璧主義など)を紙に書き出すなど、自分はどういう考え方をしているか?ということを徹底的にやってみました。
あれから5年が経過し、薬物治療は卒業できましたが、いつ自分の中のアダルトチルドレンが再発するか分かりません。
自分を客観的に見つめ、極端な考え方をせず、「自分はこれでいいんだ」と常に言い聞かせて行動するようにしています。
【体験者のエピソード②】自分自身でどう考えて行動していくか?という意味では、専門家である心理カウンセラーのアドバイスはとても貴重なものだと思います。(埼玉件在住 30代前半男性)
子どもの頃から人間関係がうまくいかず、学生時代は友達や恋人もまったくいませんでした。
高校を出て就職してからも会社内の人間関係に苦しみ、自分に自信が持てず、仕事以外は家に引きこもっているような状態でした。
そして30歳を過ぎた時に自分がアダルトチルドレンであることに気づき、激しい怒りと自己嫌悪に陥りました。
原因はアルコール依存症の父親です。
母親は幼少の頃に亡くなり、あまり働かない借金まみれの父親との二人暮らし、毎日のようにギャンブルとお酒に明け暮れ、貧しいために学校も行けず今に至ります。
現在父親とは絶縁状態ですが、私自身の精神状態は限界に近いものでした。
アダルトチルドレンである自分を克服するために色々な本を読んでみましたが上手くいかず、自分ひとりでは限界を感じ、専門家の協力を得ようと心理カウンセリングを利用することにしました。
私にとっては、これまでの自分の生きてきた話を聞いてもらえるだけで心が軽くなったのですが、アダルトチルドレンを克服していくためのステップや取り組み方をアドバイスしてもらいました。
もちろんカウンセリングを受けただけでは何も変わらないのかも知れません。
カウンセリングを受け、自分自身でどう考えて行動していくか?という意味では、専門家である心理カウンセラーのアドバイスはとても貴重なものだと思います。
【体験者のエピソード③】インナーチャイルドセラピーを受けていくうちに、私の心の根底にあったネガティブ感情が少しずつ解放されてきました。(千葉県在住 20代後半女性)
私は2年前に結婚をして、夫と1歳の子どもの3人で暮らしています。
両親や兄弟といった家族とは完全に縁を切った状態です。
私がアダルトチルドレンだということは、ここ1年くらいで自覚するようになりました。
物心がつく頃には父親から暴力を受けることが多く誰も助けてくれませんでした。
また母親には愛情をもらえず、兄弟(兄二人)には常にのけ者にされてきました。
自分のすべてに自信が持てず、人からの評価を常に気にしていて、でも人の好意を信じることができない。
そして毎日何かにビクビクしながら生きていました。
家族と縁を切って数年経っても、過去の辛かった記憶を定期的に思い出してどうしようもなく心が沈み込んでしまうことがありました。
そんな私の状況を心配し、夫がインナーチャイルドセラピーを勧めてくれました。
私はカウンセラーの方と対面で話すのが苦手だったので、目を閉じて行う催眠療法(ヒプノセラピー)をベースとした心理療法を受けました。
何度かインナーチャイルドセラピーを受けていくうちに、私の心の根底にあったネガティブ感情が少しずつ解放されてきました。
今では並行して人間関係やコミュニケーション関連の本も読むようになりました。
大切な家族である夫や子どものためにも、元気で明るい自分に変わっていきたいと思います。
【まとめ】周囲を巻き込んだアプローチが効果的!アダルトチルドレンという「不幸の連鎖」を防ぐことも重要!
アダルトチルドレンは、子供時代に家庭で経験した「虐待」「依存症」「機能不全家族」「毒親」をもった親の原因によって生み出されるものです。
そしてアダルトチルドレンとしての生きづらさは、該当する本人だけの問題ではなく家族の問題でもあります。
ただひょっとしたら、子供を傷つけ、アダルトチルドレンを生み出してしまった親自身も、その親に過去同じように傷つけられて育った子供なのかも知れません。
そんな不幸の連鎖を防ぐには、親となった自分がそれを断ち切り、親が子供のためにできることを責任と愛をもって積極的に行うことです。
- 子供の話に耳を傾けしっかりと会話する。
- 子供を否定しない、嘘をつかない。
- 子供に無償の愛を示すことをためらわない。
- 世の中の現実や明確な限界を教える。
- 子供の気持ちを尊重し、自分の行動に責任を取らせる。
- 親自身が人間として成長するよう努力する。
- 子供は自分の所有物ではなく、人として同じ魂を持った平等な存在だということを認識する。
もし今あなたが子供を育てているのなら、上記に挙げた7つのことをぜひ実践してみて下さい。
アダルトチルドレンには、
- ヒーロー(英雄)
- スケープゴート(生贄)
- ロストワン(いない子)
- ケアテイカー(世話役)
- ピエロ(道化師、クラウン)
- イネイブラー(自己犠牲、献身的)
などの様々なタイプがありますが、ほとんどの子供が家庭内での家族のバランスを取ろうとすることから起こる現象です。
今のあなたが人間関係や社会生活などで生きづらさを感じているとしたら、ぜひほんの少しだけ勇気を出して信頼できる人に相談し力を借りてください。
その一歩が、これまでと違った新しい生き方を見つけることに繋がっていくことでしょう。
この記事が、あなたの気持ちを少しでも軽くすることができれば幸いです。
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