アダルトチルドレンなのか発達障害なのかで悩む女性
公開日:2023年5月16日/更新日:2024年10月18日
監修:遠藤まなみ(代表カウンセラー)

アダルトチルドレンとは?大人になった現在でも子ども時代の辛い体験が影響を及ぼす生きづらい状態!


アダルトチルドレン(略してAC)とは、大人になった現在でも子ども時代の辛い体験が影響を及ぼす生きづらい状態を表しています。

 

これは病名ではなく、日々の生活に困難を感じる精神的な状態を指す言葉です。

 

アダルトチルドレンとなってしまう主な原因は、親からの精神的影響が最も大きく、特に親との複雑な関係からくるトラウマが大きく関与しています。

 

「日常的な虐待」「依存症」「ネグレクト」「完璧主義」!?アダルトチルドレンとなってしまう「4つの原因」とは!?


まずはアダルトチルドレンとなってしまう「4つの原因」を紹介します。

 

アダルトチルドレンの原因となる具体的な環境としては、主に4つのパターンがあります。

  1. 日常的な虐待(身体的、心理的など)が存在する家庭で育つ。
  2. 依存症(アルコール、薬物、セックス、ギャンブル依存など)を持つ親の下で育つ。
  3. ネグレクト(保護者の責務放棄)行為が見受けられる機能不全家族で育つ。
  4. 過度に子どもに関与する、また完璧主義な毒親のもとで育つ

子どもの特性は、その子自身によるものではなく、大部分が親からの影響で形成されます。

 

そのため、子どもは自分自身の安全を確保するために無意識的に対応策を講じるようになります。

 

そしてそれらの経験が、後々の人間関係や社会生活に影響を及ぼします。

 

「自己同一性の喪失」「被害者意識」「変化への過剰な反応」!?共通する「10の特徴」とは!?


またアダルトチルドレンの特徴は、ざっくりと10項目にまとめられます。

  1. 孤立感。
  2. 自己同一性(自分は何者なのか?)の喪失。
  3. 他人の批判や怒りに対する過敏さ。
  4. 自己批判。
  5. 被害者意識。
  6. 他人への過度な関心。
  7. 変化への過剰な反応。
  8. 過剰な真剣さ。
  9. 自己と他者の違いへの過度な意識。
  10. 親密な人間関係の困難さ。

アダルトチルドレンにおいては、特に「自己肯定感の低さ」が主な特徴とされています。

 

自己評価がとても低く、自分自身の存在に価値を感じることができず、他人に自分の真価を認識されることを極端に恐れています。

 

これが思考や行動、感情、人間関係に大きく影響を及ぼし、結果として社会生活に違和感や生きづらさを感じるようになります。

 

 

発達障害とは?自閉症、アスペルガー症候群、ADHD、学習障害などを含む様々な脳機能の障害!


発達障害とは、子どもの成長の過程において、学習や社会生活に影響を及ぼす状態や障害を指しています。

 

また発達障害には、

  • 自閉症スペクトラム症(ASD)
  • 注意欠陥多動性障害(ADHD)
  • 学習障害(LD)

※注意欠陥多動性障害(ADHD)の過去の診断名は「アスペルガー症候群」

などが含まれています。

 

こういった状態は、言語や行動、社会交流、学習能力など日常生活の広い範囲で大きな影響を与える可能性があります。

 

レアなケースを挙げると、トゥレット症候群のように自分の意志とは関係なく体のどこかが突然動いてしまうようなチック症状(運動性チック、音声チック)もあります。

 

また最近よく耳にする「大人の発達障害」というものがあります。

これは主に大人(大学生以上)に見られる症状を指します。

 

もちろん子どもと同じ症状ですが、周囲の人が気付かないような軽度な状況であったり、症状自体を本人の個性や特徴として受け入れられていたような場合は、大人になるまで本人や周囲の人も気がつかないケースがあります。

 

その後、大人の発達障害として問題となってくるのは、新しい環境(進学、就職など)に置かれた時、それが自分の特性に合わない場合です。

 

たとえば、

  • 他人と上手にコミュニケーションがとれない。
  • 悩みや問題を誰かに相談することができない。

といった人間関係での基本的なやり取りができないケースです。

 

そのようなことが続くと、周囲の目が気になったりストレスが溜まるなどして、結果として2次的な問題(うつ病の発症など)を抱えてしまうことがあります。

 

「遺伝的要因」「胎児期の感染症」「親の愛情不足」!?発達障害を発症してしまう主な原因とは!?


発達障害は、生まれつきの脳の機能異常が主な原因とされていて、具体的な症状は数多く存在しています。

 

答えを言ってしまえば、現在においても発達障害の原因をすべて説明できる明確なエビデンスは見つかっていません。

 

しかし要因はひとつでなくても様々な複数のものが絡み合っている可能性があると考えられています。

 

遺伝的要素や胎児期の感染症なども影響していると言われています。

 

ただここで分かっている重要な点は、家庭環境や親の育て方、親の愛情不足といった理由から発達障害が起こることはないということです。

 

「他人との適切な距離感がつかめない」「自己抑制(感情のコントロール)ができない」「繰り上がりや繰り下がりの計算ができない」!?それぞれに共通する特徴とは!?


発達障害はいくつかの種類があり、それぞれが特有の特徴を持っています。

ここでは主な3つの発達障害についての特徴を紹介します。

 

①自閉症スペクトラム症(ASD)


自閉スペクトラム症(ASD)の特徴は、「対人スキル」や「個人のこだわり」などに見られる傾向があります。

 

これらの特徴が、大人になってからの社会生活で困難や生きづらさを引き起こすことがあります。

※過去の診断名は「アスペルガー症候群」

  • 会話の空気を読むのが苦手。
  • 暗黙のルールの把握が難しい。
  • 比喩や曖昧な表現、冗談などが理解できない。
  • 興味や関心が特定の範囲に集中する傾向がある。
  • 他人との適切な距離感がつかめない。
  • 自分の感情や思考を他人に伝えるのが困難。
  • 突然のスケジュール変更に混乱する。
  • 日常生活のルーチン(マイルール)に強く固執する。
  • 状況に応じて感情や行動を柔軟に変えることが難しい。
  • 独特の言葉の使い方やイントネーションがある。
  • 特定の感覚(聴覚、視覚、触覚、嗅覚など)が鋭敏、または鈍感だったりする。

 

②注意欠陥多動性障害(ADHD)


注意欠如多動性障害(ADHD)は、注意力の欠如や相同性(親がADHDである場合、子どもがADHDになる可能性)の高さ、また過度な活動性という特徴が見られます。

 

これらの特徴が、成人後の社会生活で以下のような経験をすることがあります。

  • 集中力が散漫になりがち。
  • 物事を忘れやすい。
  • タスクの順序付けが苦手。
  • 整理整頓が苦手。
  • 時間管理や締切に対する感覚が弱い。
  • スケジュールに従うことが困難に感じる。
  • 自己抑制(感情のコントロール)ができない。
  • 落ち着きがない状態が続く。
  • 衝動的になりやすく突然思いついたことを行動に移す。
  • 他人の話に割り込んでしまう。

 

③学習障害(LD)


学習障害(LD)は、知的な発達に遅れは生じないものの、

  • 読む
  • 書く
  • 計算する

といった特定の学習領域で、困難が見られる傾向があります。

 

たとえば、誰かと普通に話すような会話能力は問題ないのに、文字の読み書きになるとスムーズにできない、もしくは計算が難しいといった問題を抱えています。

  • 単語を位置文字ずつ読む傾向があり、全体として認識するのが難しい。
  • 形や音が似ている文字を間違えて読むことがある。
  • 読む位置を失い、読んでいる文字や行を見失うことがある。
  • 暗算が難しく、指を使って計算することが多い。
  • 漢字の正確な記憶が難しい。
  • 九九を覚えることが難しい。
  • 文字の大きさや形が一定でなく、行や枠内に書くことが困難。
  • 繰り上がりや繰り下がりの計算ができない。
  • ペンなどの筆記用具の扱いが難しく、筆圧が安定していない。

 

 

「実は共通点が多い」「医学的な治療は必要なのか」「原因はまったく違うもの」!?決定的な違いとは!?


これまでに「アダルトチルドレンの原因と特徴」と「発達障害の原因と特徴」を分けて紹介してきました。

 

ではアダルトチルドレンと発達障害の大きな違いは、いったい何でしょうか?

この2つの大きな違いを分かりやすくまとめると、

  • アダルトチルドレンは、子ども時代に特定の家庭環境で育った結果として発生する可能性のある精神的な問題。診断名はないため医学的な治療はなく、心理療法やセルフケアが有効。
  • 発達障害は、生まれつきの脳の発達に関する問題で、生物学的な原因に基づくもの。生まれや育ちの環境とは無関係。診断名であるため薬物療法や行動療法、特別な教育プログラムが有効。

という形に分けられます。

 

分かりやすく簡潔に表現するならば「環境の問題」と「脳の問題」という違いと言えるでしょう。

 

ただし、アダルトチルドレンと発達障害は「同じようなもの」と勘違いしてしまうケースは多く見られます。

 

なぜならアダルトチルドレンと発達障害は、それぞれが異なる原因と特徴を持つ一方で、一部の特徴については重複している部分があるからです。

 

たとえば、

  • 社会性の問題:親しい友人を作ったり、他人と適切にコミュニケーションを取るのが苦手。自己表現や他人の感情を理解することが難しいと感じる。
  • 感情コントロールの問題:感情コントロールができず頭に血が登りやすい。ストレスに対する反応、怒りの管理(アンガーコントロール)ができず、不安障害などを起こしやすい。
  • 自己認識の問題:自分の感情を理解して表現する似が苦手。自己肯定感が低く、自己を否定的な考え方でみる傾向がある。
  • 集中力の問題:なにか特定の物事に集中することを苦手と感じる。学習や仕事、日常生活において落ち着いた状態で取り組むことができない。

といったような共通点が見られます。

 

つまりアダルトチルドレンと発達障害は、異なる大きな違いがありながら本人でさえ認識するのが難しいというものなのです。

 

だからこそ、自分の中で少しでも当てはまるような症状があったり、精神的な生きづらさを感じたら、専門の機関で診療を受けることが大切なのです。

 

 

【まとめ】アダルトチルドレンと発達障害は似て非なるもの!改善に必要なことは「本当の自分を知ること」と「適切な治療を継続する」こと!!


いかがでしたか?

アダルトチルドレンと発達障害の違い、またそれぞれの原因や特徴の違いになどについて詳しく紹介しました。

 

まずアダルトチルドレンの問題は、自己理解が鍵となるため自己改革がポイントとなります。

具体的には、

  • 過去の経験や感情を理解する。
  • それが現在のどう影響しているかを見つける。
  • 自分の考え方の偏りを見つける。
  • 新しい視点での考え方を見つける。

といったステップが必要です。

 

しかし、これらを一人で進めていくのは大変なので、他人の助けを借りることが重要です。

具体的な方法としては、

  • サポートグループに参加する。
  • 専門のカウンセラーに相談する。
  • 関連の書籍を読んで自分で学ぶ

といったことが挙げられます。

 

同じ問題を抱える仲間と一緒に解決策を探す、または専門家の助けを借りて心のケアを受けることで、アダルトチルドレン特有の思考の偏りを改善し、心の平穏を取り戻すことができます。

 

また発達障害の問題については、根本的な治療法が見つかっていないという背景はありますが、日常生活における工夫や環境、薬物療法、心理療法の組み合わせで困難な局面を取り除いていくことは十分に可能です。

 

具体的には、

  1. 家族や上司と十分に話し合い、自分の特性を理解してもらう。
  2. 家庭内や仕事場の環境を自分に合った形に整える(協力してもらう)。
  3. 感情コントロールに問題がある場合は、必要に応じて薬物療法を選択する。

といったことが挙げられます。

 

もちろん自分の特性(クセや考え方など)を自分自身で理解して、それに適した日常生活の基盤を構築する工夫も必要です。

 

たとえば人とのコミュニケーションが苦手だと感じていたら、コミュニケーションのスキルを学べるセミナーに参加するのもひとつの方法です。

 

また予定の管理が苦手だと感じていたら、スケジュール管理が楽にできるアプリ(スマホ)を上手に活用するなどの工夫ができます。

 

さらに他の手段としては、発達障害に関連した書籍やツールも数多く提供されているので、それらを参考にしてベストな改善策を自分自身で見つけ出すことも大切です。

 

もし、今のあなたが

  • 「自分はアダルトチルドレンなのか?」
  • 「自分は発達障害なのか?」

という悩みを抱えていたとしたら、専門の機関で受診することをためらわずに、まずは自分がどういった状態であるのかを速やかに確認してください。

 

そして「自分が何者なのか?」ということ分かれば、あとはそれに伴った改善策を進めていくだけです。

 

本当の自分を知ることで、自分が進むべき道が見えてくるのではないでしょうか?

この記事があなたの気持ちを少しでも楽にすることができれば幸いです。

 

 

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